以前の連載記事『大山壇の入試問題Pick Up !』とテーマが重複することもあるかもしれませんが,主に高校生・大学受験生に向けた内容にしていきます。生徒のみなさんにとっての演習に,先生方にとっては日々の指導の参考に,少しでも役立てば幸いです。
今回は『ベクトル』です。
ベクトルは図形を計算する道具です。図形の把握が苦手でも,それを機械的に計算できるのがベクトルです。
8.1 和・差・実数倍
まずは基本計算として,和・差・実数倍を使いこなせることが大切です。
この「差」の定義は
\(\overrightarrow{\text{OB}}+\overrightarrow{\text{BA}}=\overrightarrow{\text{OA}} \iff \overrightarrow{\text{BA}}=\overrightarrow{\text{OA}}-\overrightarrow{\text{OB}}\)
のように,数の計算と同様に式変形できることを保証しています。
また,この差の表現は始点の変換という操作を表します。\(\overrightarrow{\text{BA}}\) の始点は \(\text{B}\) ですが,\(\overrightarrow{\text{OA}}-\overrightarrow{\text{OB}}\) は始点 \(\text{O}\) のベクトルで表されています。いろいろな問題を解くときに,この始点の変換が役立ちます。
例えば,線分 \(\text{AB}\) を \(3:2\) に内分する点を \(\text{P}\) とするとき,その線分 \(\text{AB}\) 上の比を考えて
\(\overrightarrow{\text{AP}}= \cfrac{3}{5}\ \overrightarrow{\text{AB}}\)
とできます。これを始点変換すれば
\(\begin{aligned} \overrightarrow{\text{OP}}-\overrightarrow{\text{OA}} & = \cfrac{3}{5}(\overrightarrow{\text{OB}}-\overrightarrow{\text{OA}}) \\[5pt] \therefore\ \overrightarrow{\text{OP}} &= \left(1-\cfrac{3}{5}\right)\overrightarrow{\text{OA}}+\cfrac{3}{5}\ \overrightarrow{\text{OB}} \\[5pt] & =\cfrac{2}{5}\ \overrightarrow{\text{OA}}+\cfrac{3}{5}\ \overrightarrow{\text{OB}} \end{aligned}\)
となります。
この数行の計算を省略するのが,いわゆる「内分の公式」です。そう,高々数行です。だから,大山は「内分(外分)の公式なんか無くても困らない」と思っています。
また,次図のような平行四辺形 \(\text{OXPY}\) を作っていると考えれば,\(\overrightarrow{\text{OA}}\) の係数が \(\cfrac{2}{5}\),\(\overrightarrow{\text{OB}}\) の係数が \(\cfrac{3}{5}\) になるのは当然の結果です。
さて,これらのことを踏まえて,次の問題を解いてみましょう。頻出問題です。
点 \(\text{P}\) を始点として考える方法もありますが,三角形の頂点のひとつを始点とするのが基本です。(解答例はこちら)
8.2 直線上の点の表現
直線 \(\text{AB}\) 上の点 \(\text{P}\) は,内分点であろうが,外分点であろうが,どんな場合でも
\(\color{#ff0000}\boldsymbol{\overrightarrow{\text{AP}}=k\ \overrightarrow{\text{AB}}}\)( \(\color{#ff0000}\boldsymbol{k}\):実数)
と表せます。
さて,次のようなベクトルの頻出問題も交点が満たすべき条件を数式化することで,図に頼ることなく解くことができます。
ベクトルの学習の初期段階では,図とベクトルの数式がどのように対応しているかに慣れるためにも,図を描くことが大切だとは思いますが,ある程度慣れてきたら,むしろ図を描かずに計算で解く練習をするべきだと大山は考えています。
図を描いて解くことを前提にしてしまっていると,特に空間図形などで図が分かりにくいものや,そもそも抽象的な条件の問題に対応できなくなってしまいます。
したがって,大山は,よくある「\(t:(1-t)\) とおく」解法も好きではありません。なぜなら,「\(t:(1-t)\) とおく」は内分点であることが分かっている前提,つまり,図を描くことを前提とした解法になっているからです。(実際には外分点であっても同様におけますが,それがスムーズにできる人は少ないでしょう。)
この解法に慣れすぎると,交点が三角形の外にできる問題や,空間内での直線の扱いに困ることになります。
したがって,大山は次のように解いているし,授業で説明しています(実際には情報の整理のために図も描きますよ)。
①より,\(\boldsymbol{\overrightarrow{\mathbf{CP}}=s \overrightarrow{ \mathbf{CD}}}\)( \(s\):実数)とおけるから
\cfrac{2}{3}s=1-t \\[3pt]
1-s=\cfrac{1}{4}t
\end{cases} \\[5pt]
& \therefore\ (s,\ t)=\left( \cfrac{9}{10},\ \cfrac{2}{5}\right) \end{aligned}\)
直線上の点を実数倍で表し,差の表現によって始点変換するだけであって,「\(t:(1-t)\) とおく」「内分の公式」「係数の和が1」などの小賢しいテクニックは不要だし,図形全体像が分からなくても答を得られます。
では,次の問題を解いてみてください。
線分 \(\text{PG}\) にとっては外分点になってしまいますが,「実数倍」でおけば何も問題ありませんね。(解答例はこちら)
8.3 平面上の点の表現
2つのベクトル \(\overrightarrow{\text{AB}}\) と \(\overrightarrow{\text{AC}}\) によって張られる平面 \(\text{ABC}\) 上の点 \(\text{P}\) は
\(\color{#ff0000}\boldsymbol{\overrightarrow{\text{AP}}=s\ \overrightarrow{\text{AB}}+t\ \overrightarrow{\text{AC}}}\)( \(\color{#ff0000}\boldsymbol{s, t}\):実数)
と表せます。
「直線と直線の交点」と同様に,「平面と直線の交点」も平面上にあることと直線上にあることを数式化してあげれば,(図に頼ることなく)解くことができます♪
空間図形である分,少し計算量は増えますが,【30】と同様に解けるということが実感できましたか?(解答例はこちら)
そして,最後の問題はこちら。これまでのことを踏まえて,頑張ってください!
(1)をウマく解ければ,(2)はあっさりと終わります。(解答例はこちら)
第8回は以上です。
ベクトルは少ない知識でたくさん解ける便利な道具です。しっかり練習してください!
次回は「ベクトルの内積」がテーマです。お楽しみに♪
宇都宮北高校,東北大学理学部数学科卒。
2006年度から代々木ゼミナールの講師となり,現在は新宿本部校と札幌校に出講しています。対面・映像の授業の他にも,テキスト・模試・解答速報の作成なども行っています。
もっと毒をはいている大山を見たい方は,X(旧Twitter)をどうぞ!→ @dan_oyama_0206
《著書》
・『全国大学入試問題正解』(旺文社)解答執筆(京大,一橋大,東北大など)
・『整数 分野別標準問題精講』(旺文社)
・『全レベル問題集③』(旺文社)
・『全レベル問題集⑤』(旺文社)
・『大山壇の基本から身につける計算力IA』(KADOKAWA)
・『大山壇の基本から身につける計算力IIB』(KADOKAWA)
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