特集記事(高校)

高校

2025.05.22

【#7】大山壇の入試問題Pick Up!「計算力を鍛える!」

 予備校講師の大山が,近年の大学入試問題をPick Upしながら,どのように指導しているかを紹介していく連載記事です。みなさんの日々の少しでも役立てば幸いです。

 みなさん,こんにちは。
 数学の勉強において,なんだかんだ言って,計算力は大切です!
 いくら理屈が分かって立式ができても,その後の計算ができなければ正しい結果を得られません。(1)でミスしていれば,(2)以降に大きく影響します。計算が遅い人は,再計算して確かめることもできないし,行き詰まったときに別の方法を試すこともできません。
 計算力を鍛えるには地道にコツコツと練習するしかないので,口うるさく生徒たちに言い続けましょう!

多項式の計算

 大学入試では様々な計算力が試されますが,その中でも圧倒的に触れる機会が多いのが「多項式の計算」です。ここでの計算力が色々な分野に影響します。したがって,学習初期の段階から,ある程度先を見越した指導が必要です。
 例えば,多項式の展開では,最初に仕組み(ここでは分配則)の理解の為に

\((x+3)(x^2+4x+1)\) を展開するときには,\(A=x+3\) とおくことで
\((x+3)(x^2+4x+1)=A(x^2+4x+1)\)
\(\hspace{180px}=Ax^2+4xA+A\)
\(\hspace{180px}=(x+3)x^2+4x(x+3)+(x+3)\)
\(\hspace{180px}=(x^3+3x^2 )+(4x^2+12x)+(x+3)\)
\(\hspace{180px}=x^3+7x^2+13x+3\)
とできる。

という指導をすることは良いことだと思います。そして,ここから,できるだけ置き換えずに(カタマリを上手く見て)展開することを目指すというのも良いですね。特に,因数分解するときに,この「カタマリで見る」という感覚がとても大切になります。
 しかし,ここまでで終わってしまっては,結局「展開してから同類項をまとめる」という作業から抜け出せません。多項式の整理・処理がウマい人は同類項としてまとまる所を展開するのです。上記の例であれば

【#7】大山壇の入試問題Pick Up!「計算力を鍛える!」01

よって,これを整理して

\((x+3)(x^2+4x+1)=x^3+7x^2+13x+3\)

と暗算するということです。
 これを当たり前のようにできると,多項式の除法でも,筆算をせずに商と余りを求められます。例えば,\(x^3-2x^2+4x+3\) を \(x+2\) で割るときには,まず,ざっくりと

\(x^3+2x^2+4x+3=(x+2)(\color{#ff0000}{\text{2次式}}\color{#000000}{)+(}\color{#ff0000}{\text{定数}}\color{#000000}{)}\)

とイメージして,次数の高い方からツジツマをあわせていきます。

【#7】大山壇の入試問題Pick Up!「計算力を鍛える!」02

 結局のところ,展開して元に戻ることを確認しながら商と余りを求めているので,結果的に安全です。
 そして,多項式の除法に慣れたら,いわゆる次数下げをマスターしておくべきです。例えばこんな問題。

【#7】大山壇の入試問題Pick Up!「計算力を鍛える!」04

 もちろん,直接代入からの計算ゴリ押しで正解する力強さも大切ですが,やはり次数下げは必須です。(解答例はこちら

計算力勝負の問題

 続いて,やるべきことは割と分かりやすいけど,きちんと計算をやり切れるかで勝負がつくタイプの問題を3題紹介します。
 まず1題目は,昨年ニューサポートでも紹介した九州大の空間座標の問題です。

【#7】大山壇の入試問題Pick Up!「計算力を鍛える!」05

 (2)では,面積公式

\(\triangle\text{PQR}=\dfrac{1}{2}\sqrt{\left|\overrightarrow{\text{PQ}}\right|^2\left|\overrightarrow{\text{PR}}\right|^2-\left(\overrightarrow{\text{PQ}}\cdot\overrightarrow{\text{PR}}\right)^2}\)

を使えばイイだけなので,特別な発想は不要です。しかし,実際に解いてみるとけっこうな計算力が試されます。こういう問題が合否を分けます!(解答例はこちら

 次は,今年の京大(文系)からこの問題です。

【#7】大山壇の入試問題Pick Up!「計算力を鍛える!」07

 \(f(x)\) を \(px^2+qx+r\) とでもおいて係数比較をすれば,\(a,b,c,p,q,r\) の6文字の連立方程式になります。あとは,丁寧に文字を消去して \(a,b\) の条件に持ち込むだけなのですが,やはり差が付きやすい問題です。(解答例はこちら

 そして最後は,文字定数が絶妙にジャマで計算力が試される積分計算です。

【#7】大山壇の入試問題Pick Up!「計算力を鍛える!」09

 計算力って大切ですね。(切実)(解答例はこちら


 第7回は以上になります。近年の入試においては,発想力よりも計算力が要求される問題がとても多くなっています。計算の大切さを言い続けましょう!
 次回は苦手とする生徒の多い「場合の数・確率」について書く予定です。お楽しみに♪

【大山 壇(おおやま だん)先生 プロフィール】
宇都宮北高校,東北大学理学部数学科卒。
2006年度から代々木ゼミナールの講師となり,現在は新宿本部校と札幌校に出講しています。対面・映像の授業の他にも,テキスト・模試・解答速報の作成なども行っています。
もっと毒をはいている大山を見たい方は,X(旧Twitter)をどうぞ!→ @dan_oyama_0206
《著書》
・『全国大学入試問題正解』(旺文社)解答執筆(京大,一橋大,東北大など)
・『整数分野別標準問題精講』(旺文社)
・『全レベル問題集 3』(旺文社)
・『全レベル問題集 5』(旺文社)
・『大山壇の基本から身につける計算力IA』(KADOKAWA)
・『大山壇の基本から身につける計算力IIB』(KADOKAWA)

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