
みなさん,こんにちは。第4回の今回は,先日行われた新課程最初の共通テストから話題をピックアップします。
2次関数の決定
Ⅰ・A第2問〔1〕(新旧共通)とⅠ第3問〔2〕で2次関数の問題として,いわゆる「2次関数の決定」が出題されました。花子と太郎が公園の噴水を見ながら会話しているという設定に,高校時代に同じことをしたなぁと懐かしく感じました。まぁ,隣に花子はいなかったのですが…。
「2次関数の決定」では与えられる条件に応じて
一般形:\(y=ax^2+bx+c\)
標準形:\(y=a(x-p)^2+q\)
分解形:\(y=a(x-\alpha)(x-\beta)\)
を使い分けることが大切なのですが,多くの教科書では分解形が扱われておらず(これは「2次関数の決定」よりも「2次方程式・不等式」の方が後に扱われるという事情もあるのでしょう),問題集・参考書に任されているようです。
その為か,例えば「グラフが3点 \((1, 0)\),\((3, 0)\),\((5, 12)\) を通るような2次関数の式を求めよ」みたいな問題で,\(y=ax^2+bx+c\) に代入して \(a, b, c\) の連立方程式に帰着させる生徒が多いものです。
それが間違っているというわけではありませんが,最初から \(y=a(x+1)(x-3)\) とおき,\((5, 12)\) を代入することで \(a\) だけを求める方が速いわけです。
さて,今回の共通テストの問題では,(1)で
- 3点 \((-\frac{5}{2},\ 0)\),\((\frac{1}{2},\ 0)\),\((0,\ 1)\) を通る放物線 \(C_1\)
- 3点 \((-1,\ \frac{9}{5})\),\((1,\ \frac{9}{5})\),\((\frac{3}{2},\ 0)\) を通る放物線 \(C_2\)
の式を考えさせられます。
\(C_1\) はまさに上の分解形を利用して
\(y=a(x+\frac{5}{2})(x-\frac{1}{2})\)
とおくのが速いでしょう。
\(C_2\) も,分解形をちょっと応用して
\(y=a(x+1)(x-1)+\frac{9}{5}\)
とおくのがウマいわけです。これは,\(x\) 軸と \(x=-1, 1\) で交わる放物線を \(y\) 軸方向に \(+\frac{9}{5}\) だけ平行移動したものと考えることで立式しています。
こんな話を踏まえて,来年の受験生たちに3月or 4月ぐらいに解かせておきたい問題がこちらです。

(1)は,\(y=ax^2+bx+c\) とおいて3点代入でも構いませんが,点 \((5, 0)\) を通ることに注目して
\(y=a(x-5)(x-\beta)\) もしくは \(y=(x-5)(ax+b)\)
とおくのがウマいでしょう。
そして,大山はもっと違うおきかたをします。気になる方は解答例をご覧になってください。(解答例はこちら)
角比較型方程式
II・B・CとⅡ・Bともに,第1問で三角関数のいわゆる「角比較型方程式」が出題されました。センター試験時代にも何度か出題がある(’12第1問〔2〕,’10第1問〔2〕など)タイプの問題です。これは要するに
\(\boldsymbol{\sin \alpha = \sin \beta}\) もしくは \(\boldsymbol{\cos \alpha = \cos \beta}\)
を満たす \(\alpha, \beta\) の関係式を求めることに帰着するのですが,和積公式を利用する問題と認識している生徒・指導者も多いようです。
しかし,過去のセンター試験でも今回の共通テストでも,定義に基づいて直接解くことを誘導しています。
\(\sin\alpha=\sin\beta\) の場合,単位円周上の角度 \(\alpha\) の点と角度 \(\beta\) の点の \(\boldsymbol{y}\) 座標が等しい という意味なので,次図のような2パターンが考えられます。

(イ)のときは \(\alpha + \beta\) がちょうど半周分であり,(ロ)のときは \(\alpha=\beta\) が成り立つので,まとめて
\(\alpha + \beta = \pi\) または \(\alpha – \beta = 0\)
と表せます。ただし,角度 \(\alpha\),\(\beta\) は単位円を何周もしているかもしれない(一般角)ので,整数 \(k\) を用いて
\(\boldsymbol{\alpha + \beta = \pi + 2 \pi k}\) または \(\boldsymbol{\alpha – \beta = 0+2\pi k}\)
となります。
今回の共通テストの問題における(1)の
\(\sin(\theta + \frac{\pi}{6})= \sin 2\theta\)
も,鬱陶しい誘導なんか無視して上記のように考えれば
\((\theta + \frac{\pi}{6})+2\theta = \pi + 2\pi k\) または \((\theta + \frac{\pi}{6}) -2\theta = 0+2\pi k\)
\(\therefore\ \theta =\frac{(5+12k)\pi}{18}\) または \(\theta = \frac{(1-12k)\pi}{6}\)
とでき,\(0 \leqq \theta \lt \pi\) に適するように整数 \(k\) を選んで
\(\theta = \frac{\pi}{6},\ \frac{5}{18}\pi,\ \frac{17}{18}\pi\)
となります。
(2)の
\(\cos(\theta + \frac{\pi}{6})=\cos 2 \theta\)
も,同様に(コサインなので \(\boldsymbol{x}\) 座標が等しいと)考えて
\((\theta + \frac{\pi}{6})+2 \theta = 2\pi + 2\pi k\) または \((\theta + \frac{\pi}{6})-2 \theta = 0 + 2\pi k\)
\(\therefore\ \theta = \frac{(11+12k)\pi}{18}\) または \(\theta = \frac{(1-12k)\pi}{6}\)
とでき,\(0 \leqq \theta \lt \pi\) に適するように整数 \(k\) を選んで
\(\theta = \frac{\pi}{6},\ \frac{11}{18}\pi\)
となります。(筆者は誘導付きの(1)よりも(2)の方が圧倒的に速く解けました。)
さて,このような「角比較型方程式」の練習(プラスα)になる問題がこちらです。

とは言っても,出題者は「3倍角の公式」の利用,もしくは「和積公式」を想定していそうな順番ですけどね。授業で使うときには,(2)→(1)→(3)の順番にして生徒たちに解かせた方が「角比較型方程式」の練習になるかもしれません。(解答例はこちら)
第4回は以上になります。共通テストも(紆余曲折ありましたが)センター試験のときと同様に,2次試験の勉強に繋がるような内容に落ちついてきた印象です。逆に言えば,しっかりと数学力をつけることが,正しい共通テスト対策になり得るということですね。
それではまた次回をお楽しみに♪
宇都宮北高校,東北大学理学部数学科卒。
2006年度から代々木ゼミナールの講師となり,現在は新宿本部校と札幌校に出講しています。対面・映像の授業の他にも,テキスト・模試・解答速報の作成なども行っています。
もっと毒をはいている大山を見たい方は,X(旧Twitter)をどうぞ!→ @dan_oyama_0206
《著書》
・『全国大学入試問題正解』(旺文社)解答執筆(京大,一橋大,東北大など)
・『整数分野別標準問題精講』(旺文社)
・『全レベル問題集 3 』(旺文社)
・『全レベル問題集 5 』(旺文社)
・『大山壇の基本から身につける計算力IA』(KADOKAWA)
・『大山壇の基本から身につける計算力IIB』(KADOKAWA)
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