今週の算数・数学フォト
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みさきです。富山県の立山室堂平(たてやまむろどうだいら)に来ています。もう夏も近いのに、一面の雪、雪、雪! まるで真冬みたいな寒さだよ。ますりん、あっちに見えるすごいカベが、「雪の大谷」かな?
その通り。深い深い雪の中から道路だけを掘り出すように除雪すると、周りの雪が絶壁みたいに残るんだ。高いときには、20mを越える高さの壁になるんだって。なにしろ、世界的にも有名な山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」だからね。最寄駅の室堂ターミナルは日本でいちばん高い場所にある駅で、標高はなんと2,450mだよ。
まさに雪山の中なんだね。つまり、あのカベのてっぺんまで、びっしり雪が積もっていたわけか。一面の雪の中から、どうやって道を見つけるんだろう。道がわからないときは、スマートフォンを使うけど…。あっ、スマートフォンには、GPSがついてるって聞いたことがあるよ!
うふふふふ、さすがみさきさん! そうなんだ。雪をかきわけるブルトーザーに、GPSがついてる。つまりカーナビだね。立山黒部アルペンルートが通れるのは4月から11月までだから、4月の開通に向けて、冬の間に積もった雪をどんどん除雪していくんだ。全部で20台以上のブルトーザーやロータリー車が大活躍するんだって。GPSが導入されるまでは、雪が降る前に立てた目印のポールやコンパスを使って、測量しながら除雪していたらしいよ。
へえええ。コンパスで測量するなんて、きっとものすごい技術だね。そしてGPSって、よく名前は聞くけど、やさしく言うとどういう仕組みのもの?
GPSは「グローバル・ポジショニング・システム」だよ。地球の周りをぐるぐる回っている人工衛星が飛ばしている信号をキャッチしながら、自分が地球上のどこにいるのか、計算していくんだ。
人工衛星! 宇宙からの信号だったんだね。つまり、衛星と自分との距離を測っていくということ? ええと、それはどうやって……?
光の速さのことは、知ってるかな? 宇宙空間を飛んでいる衛星が電波を発信してから、地上のカーナビやスマートフォンが電波を受信するまでの時間がわかれば、距離が計算できちゃう。
なるほど。ものすごく遠すぎるし速すぎるけど、「速さ \(\times\) 時間」で距離が計算できるのは、自動車と一緒だね!
おおっ、うまくイメージできたね。じゃあためしに、2つの衛星からの距離のちがいを考えてみようよ。たとえば、こんな場合は?
衛星A:発信と受信の時刻の差が0.068秒
衛星B:発信と受信の時刻の差が0.07秒
光の速さは、秒速約300,000km だよ。
わわ、2つの衛星からの信号をキャッチするまでの時間の差は、たったの0.002秒? まばたきするより短そう! そして光の速さは速すぎる!
いやいや、もちろん大丈夫。数がわかったら、あとは落ち着いて計算するだけ。大きな数と小数だから、0の個数や小数点の位置には注意だね。
\( 0.068 \times 300000=20400\)
\( 0.07 \times 300000=21000\)
えっ。たった0.002秒の違いで、こんなにも距離が違ってくるんだね!
いいところに気づいたね、みさきさん!少しの時間の違いで距離が大きく変わるから、ものすごく正確な時計を使っているんだよ。さらに、位置を決めるには、3つの衛星があれば良いんだけれど、実際には4つの衛星を使って位置を計算して誤差を減らしているんだ。現在のGPSの誤差はわずか数mだし、これを数cmにまでへらす技術も開発されているんだよ。
数cmって、指でほんの、これくらい? うーん。すごすぎてクラクラしちゃう。でもますりん、そろそろ雪のカベの方に行ってみたい。それに、あっちに見える黄色い車は、もしかして除雪車じゃない? さぁ、いくよー!
*雪の大谷/富山県中新川郡立山町。北アルプス山脈を貫く山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」のうち、室堂の近くにある「大谷」を通る道路を除雪してできる巨大な雪の壁が「雪の大谷」と呼ばれる。
*GPSのイラスト:大野寛武先生制作
〒930-1406 富山県中新川郡立山町芦峅寺ブナ坂
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