今週の算数・数学フォト

2023.10.02

タイヤが奏でるメロディー

メロディーライン

今日は、ルーローとドライブ。今は群馬県の榛名湖の近くだよ。きれいな山も見えて、気持ちのいい道だけど……。ねぇ、ルーロー。これから不思議なポイントを通るんだったっけ?

そうそう。ゆうなさん、もうすぐだ。よーし、始まるよ。ほんの数十秒だから、よく聞いていて!

♩  ( しずかな こはんの もりのかげから )

音楽が聞こえてきた! でも、いきなりどうして? 林の中に、スピーカーがあるのかな? カッコウ カッコウ……これ、「静かな湖畔」だね。……あ、終わっちゃった。

じゃーん。今のが、群馬名物「メロディーライン」だよ。さっきの曲はスピーカーじゃなくて、道路から聞こえてきたんだ。ちょうど昔のレコードみたいに道路に溝が刻まれていて、そこを走るタイヤの音を、音楽みたいに聞こえさせてくれる仕組みだよ。

へえええ、タイヤの音! 本当にメロディーが聞こえたよ。すごいなぁ。でも、どうして? 音って、空気の振動じゃなかったっけ……?

さすが、ゆうなさん。その通りだ。溝の上をタイヤが転がった振動で、空気が震えるわけ。溝の間隔が狭いと高い音が出て、広いと低い音が出るよ。

【今週の算数・数学フォト】タイヤが奏でるメロディー02

でも、楽譜通りに音程や長さの違いを出すことって、きっと、ものすごく細かい作業だね。どのくらいの幅で、溝を作ればいいんだろう。

よーし。少し考えてみようか。例えば「ド」の音は周波数が約261.6Hz(ヘルツ)だから、車が1秒走る間に、およそ262か所の溝があればいいことになるよ。

なるほど! ここを走る車が1秒でどれくらい進むのか、計算すればいいね。この道の制限速度は時速50kmだから、\(50\text{km}=50000\text{m}\) を1時間の秒数でわると
\(\quad\quad\quad 50000 \div 3600 \fallingdotseq 13.9\)
制限速度で走る車は、1秒で約13.9m進むことになる。これで溝の間隔を考えると
\(\quad\quad\quad 13.9 \text{m} \div 262 \fallingdotseq 0.0531 \text{m}=5.31 \text{cm}\)
「ド」の音を出したいなら、溝は5.31cmごとに刻めばいいんだ!

やるね! ゆうなさん。この幅を変えながら道路を刻んでいくことで、いろいろな音程が出せるんだね。

それにしても、262本もの溝を刻んで、やっと1秒分のメロディーが聞こえるだなんて。気が遠くなりそう。

本当にね。実際には、定規で測って道路に印をつけてから、機械で削っていくそうだけど。長さ2mほどの溝だと、1台の機械で1日に作れるのは約140本なんだって。工事も大変だ。

でも、運転していて音楽が聞こえたら、びっくりするし嬉しいよね。何度でも通りたくなっちゃう。

そうだね! びっくりするから居眠り運転の防止になるし、制限速度でちゃんとメロディーを聞きたくなるから安全運転にもつながるし、いいことづくめ。2004年に、日本で発明された技術なんだよ。全国で30ヶ所以上あるうち、ここ群馬県には10ヶ所も設置されているんだ。新しい群馬名物、というわけ。このまま、別のメロディーラインにも行ってみようか。

やったぁ! 次は何の曲だろう。群馬のドライブ、楽しいね!

*メロディーライン/群馬県が、道路の補修に合わせて設置。高崎市の「静かな湖畔」、前橋市の「チューリップ」など、県内に10ヶ所ある。

〒370-3348 群馬県高崎市榛名湖町

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