今週の算数・数学フォト

2023.10.16

手品みたいに動く橋

筑後川昇開橋

今日は、ひろとさんと筑後川に来ています。福岡県と佐賀県の間を流れる川だよ。広々、雄大だね。

それにしてもルーロー、あの橋の形は変わってるね。高い鉄塔が2本、向かい合ってる。

昔は線路だったんだ。この大きな川に、列車を走らせるために作られた橋なんだよ。でも、そのJR佐賀線は1987年に廃線になったから、今では遊歩道に……。

あれっ、ルーロー! 橋が動き出した。ゆるゆると上がっていくよ。渡れなくなっちゃう。

うん。ちょうど時間だね。この橋は、「筑後川昇開橋」。国の重要文化財にも指定されているよ。昇開橋というのは、橋げたの一部を上下できる橋のことなんだ。今でも決まった時間に上げたり下ろしたりして見せてくれるけど、そもそもこういう橋が必要になった理由はなんだと思う? ヒントはね、「電車も船も通したい!」。

なるほど、船か。もしかして、真ん中の部分に船を通していたのかな?

ひろとさん、大正解だよ。この橋ができた1935年当時、近くにあった若津港は米の流通の中心地で、明治から昭和初期にかけては博多港よりも取扱高の大きい、この地方最大の港町だったんだ。この港に出入りする大きな船がたくさん通る川なのに、そこに鉄道まで通したいとなったから、さぁ大変。

それはなんというか、ほとんど無茶な話だ。

その無茶を実現してしまったのが、この橋なんだ。煙突やマストのある大型船舶にぶつからないよう、普段は橋げたを高く上げておく。列車が通るときだけ、線路の高さまで下ろす。可動部を持ち上げる高さは、なんと23m!

【今週の算数・数学フォト】手品みたいに動く橋02

(大型船が通るとき)

【今週の算数・数学フォト】手品みたいに動く橋03

(列車が通るとき)

23m! すごい高さだ。片側を固定した橋げたをパックリ持ち上げるタイプの「跳ね橋」は知っていたけど……これは、平行移動で高く持ち上げてしまうんだね。

そう、まさに平行移動だね! しかも、この橋を作る工事のときにも、平行移動の考え方が使われたんだよ。筑後川のこの辺りは海が近いから、潮の満ち引きに大きな影響を受ける。橋げたを川にかけるときに、この水面の高さの変化を利用したんだ。図を見てみて。

【今週の算数・数学フォト】手品みたいに動く橋04

重たい橋げたは2台の船に乗せて、水面が高くなっている満潮のタイミングで移動する。すでに建設した橋脚の場所まで来たら、きっちりと位置を合わせてから潮が引くのを待つんだ。

【今週の算数・数学フォト】手品みたいに動く橋05

じわじわと水面が低くなって、橋げたが橋脚にくっついたところで、すかさず固定!

おもしろい! すごいアイディアだね。考えた人に、会ってみたいよ。

でしょう? この橋を設計した技師の坂本さんは、手品師としても有名な人だったんだ。この昇開橋には、ほかにもたくさんのすごいアイディアが満載で、坂本さんご本人も「新しいトリックで人を驚かせることが好きで、そんな心理が橋の設計にもはたらいた」と話していたそうだよ!

*筑後川昇開橋/福岡県大川市・佐賀県佐賀市。1935年開通、1987年に廃止されたが、1996年に筑後川昇開橋遊歩道として再び開通した。国指定重要文化財。

〒840-2102 佐賀県佐賀市諸富町

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