今週の算数・数学フォト

津山洋学資料館

そうたです。ここは岡山県津山市の「津山洋学資料館」。洋学って、つまり西洋の学問だよね。

その通り。そうたさんなら、「蘭学(らんがく)」という言葉も知っているかな? 江戸時代は西洋の中ではオランダとしか交流がなかったから、西洋からやってきた学問は蘭学と呼ばれていたんだ。漢字の「和蘭(オランダ)」の蘭だね。ところが……?

そうか! 幕末に開国して、イギリスやドイツ、フランスの情報もどんどん入ってきた。そこから洋学、と呼ばれるようになったんだ。

バッチリだね。江戸時代から明治のはじめにかけて、ここ津山からたくさんの重要な洋学者が生まれたんだ。医学や化学、歴史研究、外交まで、広く活躍した5人の洋学者「津山洋学五峰」を中心に、当時の洋学を紹介するのがこの資料館だよ。「五峰」にちなんだ5の数字にも注目しながら、見てみようか。

【今週の算数・数学フォト】五角形の殿堂02

おっ、骨格模型だ。有名な『解体新書』もある。蘭学の始まりが、この部屋のテーマだね。

津山で初めて蘭学を研究した宇田川玄随(げんずい)は、『解体新書』を翻訳した杉田玄白の元で勉強したんだ。その養子として跡をついだのが、宇田川玄真(げんしん)。そのまた養子が、宇田川榕菴(ようあん)。榕菴は日本で初めて本格的な植物学書と化学書を書いた人で、オランダ語をもとに「細胞」「繊維」「酸素」「温度」など、たくさんの用語を作ったんだよ。コーヒーに「珈琲」の当て字をしたことでも有名なんだ。「宇田川三代」とも呼ばれるこの3人が、津山出身の5人の有名な洋学者のうちの、はじめの3人。

【今週の算数・数学フォト】五角形の殿堂03

もし榕菴さんがわかりやすく翻訳していなかったら、今の理科の用語も、ずいぶん違うものになっていたかもしれないんだね。そして、5の数字といえば……この展示室は五角形だね。もちろん天井も。次の部屋はどうかな?

【今週の算数・数学フォト】五角形の殿堂04

やっぱり五角形だ。真ん中にあるのは、船の模型。この時代の船というと、もしかして黒船? 

大正解! ペリーが持ってきたアメリカ大統領の親書を日本語に訳したのは、ここ津山で生まれた箕作阮甫(みつくりげんぽ)という人だったんだ。ロシア使節が来航したときにも、外交文書の翻訳や交渉に参加したよ。開国後は、幕府が作った「蕃書調所(ばんしょしらべじょ)」の主席教授になった。蕃書調所は、今の東京大学の前身だよ。

すごく重要な人物じゃないか。五峰の、5人目は?

箕作阮甫の養子となった、箕作秋坪(みつくりしゅうへい)だよ。二度にわたってヨーロッパに派遣されて、幕末の外交交渉で活躍したんだ。実は、秋坪の息子の菊地大麓(菊地家へ養子に出ている)も偉大な数学者で、日本人初の東京大学理学部教授だったんだよ。

うーん。津山って、すごいんだね。あれ?今度の部屋、天井のデザインが、さっきまでの部屋と全然違うよ。

【今週の算数・数学フォト】五角形の殿堂05

この建物全体のテーマが「5」だからね。正五角形が、さまざまに使われているんだ。

【今週の算数・数学フォト】五角形の殿堂06

本当だ。つまり、展示室は正五角柱。屋根は正五角錐ということになるね。

まさに、その通り。最後にそうたさん、これも見て!

【今週の算数・数学フォト】五角形の殿堂07

へえぇ。ロゴマークまで、正五角形の組み合わせだ! やるなぁ。

*津山洋学資料館/岡山県津山市。1978年開館。設計は象設計集団の建築家・富田玲子氏。

〒708-0831 岡山県津山市上之町

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