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小学校
2023.02.20
【ICT教育のイマ】デジタル教科書のキソ・キホン⑤ 学習者用デジタル教科書の使い方
前回の記事では、なぜ今急激に学習者用デジタル教科書の整備が進んでいるのかという話をさせていただきました。
しかし、前回の記事でも書いた通り、いざ導入はされたもののどのように使っていいか分からないという先生も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は、学習者用デジタル教科書の活用の仕方についてお話をしていきたいと思います。
学習者用デジタル教科書の活用のポイント
①紙面を拡大して細部まで確認する
上は、小学校3年生の重さの単元に掲載されているはかりの写真です。紙の教科書では目盛りが細かくて読み取りが難しいような場合にも、学習者用デジタル教科書では大きく拡大して一つずつ目盛りを数えることができます。
一般的に社会や理科でよく使われている機能ですが、算数や数学でも目盛りや数直線、グラフの読み取りなど、様々な場面で活用することができます。
②学習の記録を残す
学習者用デジタル教科書ではペンツール等を使って教科書の図版や資料に直接書き込みができます。紙の教科書やワークシートでは、一度書いてしまうと簡単に消せないので、書き込みに消極的になりがちですが、学習者用デジタル教科書では簡単に消したり非表示にしたりできるため、紙に比べて積極的に書き込みをするようになると言われています。
例えば上は、小学校4年生の面積の学習でL字型の図形の面積を求める場面です。教科書の図をワークシート代わりにして自分の考えをかき込むことができます。
また、上は、問題文に出てくる条件をペンツールを使って整理しているようすです。問題文中に出てくる数値を、ペンの色と種類で分けて整理し、図に数値の関係をかき込んでから式を考えます。
算数では、条件や関係を深く考えず、問題文に出てきた順番に適当に数値を組み合わせて立式してしまうことがよくあります。このように問題文や図にかきこんで整理する習慣を早い段階からつけておくことで、特に5年生の小数のわり算以降のつまずきを減らすことにつながると考えられます。
なお、このような学習者用デジタル教科書にかき込む際には、綺麗にまとめようとせず、感じたことや考えたことをどんどん書き込ませるようにしてください。学習者用デジタル教科書は何度も簡単にやり直しができるため、試行錯誤には適していますが、考えたことを体系的にまとめるにはノートの方が適しています。デジタル教科書上で考え、まとめはノートに書くといったように、ノートや他のツールと併用することが有効です。
③複数の教科書を参照する
学習者用デジタル教科書について、保護者からの期待が特に大きいのが、重さを気にせず何冊でも持ち運べる点です。複数の教科や学年の教科書をまとめて持ち運ぶことができるため、例えば下巻の学習時に上巻の内容をふり返ることもできますし、他教科や他学年の教科書を参照することもできます(※1)。
東京書籍がデジタル教科書のプラットフォームに採用しているLentranceには、このように左右に異なる教科書を並べる機能があり、手軽に複数の資料を見比べることができます。
現在文部科学省の実証事業で導入されている学習者用デジタル教科書はライセンス期間が単年度に限定されており、また、複数の教科が導入されている学校はまだ少ないので、この効果を実感する場面はそこまで多くないかもしれません。しかし、今後より多くの教科書がデジタル化され、いつでもどこでも持ち運べるようになってくると、学び方も大きく変わることが期待されています。
④デジタルコンテンツと一体的に使う
令和2年度から、教科書に二次元コードやURLを記載し、関連するデジタルコンテンツやWebページにリンクを貼ることが認められており、各教科書発行者が工夫を凝らした多数のデジタルコンテンツが利用できるようになっています。
例えば、上は東京書籍の算数5年生の、四角形の内角の和の求め方を考えるためのコンテンツです。子供たちは自由に点と点を結んで四角形を分割し、四角形の内角の和の求め方を考えることができます。
実際にこの教材を使ったある授業では、一人の子が点を四角形の外にも持っていけることに気づきました。先生は、「図形の外に点を打っても同じように考えられるのだろうか」、と問いかけ、その子は試行錯誤の末、点が図形の外にあっても計算ができることを発見しました。\(n\) 多角形の内角の和は、この後、\(360\times(n-1)-180\) として整理されますが、その考えが点の位置に関係なく普遍的に成り立つことを、直観的な操作活動を通して理解することができます。こういった考え方は従来の紙のワークシートではなかなか出てこないもので、デジタルならでは特徴の一つです。
また、上は小学校3年生「大きな数」の単元に収録されているコンテンツです。ただ見て終わりではなく、納得がいくまで数カードを何度も操作して考えることで、位取りや、繰り上がり・繰り下がりの仕組みを理解することができます。
ここで紹介したコンテンツは、どちらも教科書の2次元コードから利用できるもので、制度上の学習者用デジタル教科書にも収録されています。東京書籍では、さらに内容が充実した「学習者用デジタル教材」も発行しており、それらの教材を利用することで、より学習を充実させることができます。
⑤他のツールと組み合わせて使う
活用が進んでいる学校の中には、②や④の活動を通して出てきた子供たちの考えのスクリーンショットを取り、学習支援ツールを使って共有しているところもあります(※2)。
例えば、あらかじめ子どもたちに白紙のスライドを共有しておき、出席番号1番の子は1ページめ、2番の子は2ページめ、というように、それぞれの考えを貼り付けます。そうすることで、先生は、すべての子の考えをリアルタイムに一覧で確認することができます。
また、考え方がわからない子は友達の考えをヒントにして考えたり、友達の説明を参考に自分の説明の仕方を工夫したりすることもできます。さらに、ノートを回収したり返却したりといった手間が省け、いつでも簡単に見直せるようになります。
このように、学習者用デジタル教科書は、普段使っている他のツールと組み合わせることで、より効果を発揮します。こちらのページにも、そのような使い方の例が紹介されていますので、参考にしてみてください。
日常的に使い続けることで見えてくる良さ
これまで5つのポイントに沿って、学習者用デジタル教科書の活用の仕方についてお話してきました。「学習者用デジタル教科書の活用」というと、どうしても④のようなデジタルコンテンツの部分がクローズアップされる傾向にありますが、中には②や⑤のように使っていくうちに見えてくる良さもあります。
別の教科での実践にはなりますが、東京書籍が中学校の英語を対象に行った実証研究では、紙と全く同じ内容で、デジタルコンテンツが収録されていないページでも、「デジタルの方が使いやすい」と感じている生徒が一定数いることが分かっています。
これはもちろん逆もしかりで、子どもの特性や内容によってはデジタルより紙が使いやすいこともあります。どちらか一方を強制したり、決めつけたりせずに、選択肢として両方を与え、子ども達自身に選ばせるという姿勢も大切です。あまり難しく考えずに、まずは、一度開いてみて、子ども達と一緒に使い方を探してみてください。
※1:他教科や他学年の教科書を購入しており、かつライセンス期間内である必要があります。
※2:教科書の図版等の著作物を授業支援ツールなどのクラウドサービスを使って共有することは、公衆送信にあたり、SARTRASへの申請が必要となります。
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