特集記事(高校)

高校

2025.03.06

【#5】大山壇の入試問題Pick Up!「数学的帰納法」

 予備校講師の大山が,近年の大学入試問題をPick Upしながら,どのように指導しているかを紹介していく連載記事です。みなさんの日々の少しでも役立てば幸いです。

 みなさん,こんにちは。
 現在開催中のオンラインセミナーにて「新課程最初の共通テストを振り返る」というテーマの講演をしています。ぜひ,ご覧ください!
 さて,第5回の今回は,数学的帰納法について語ってみようと思います。

漸化式の利用

 先生方には釈迦に説法ですが,数学的帰納法というのは

整数 \(n\) についての条件 \(P(n)\) について
 \((\text{I})\) \(P(n_0)\) が成り立つ
 \((\text{II})\) \(P(k)\) が成り立つならば \(P(k+1)\) が成り立つ
の2つを示すことで
\(\boldsymbol{n_0}\) 以上のすべての整数 \(\boldsymbol{n}\) に対して \(\boldsymbol{P(n)}\) が成り立つ
と主張する証明方法

です。なお,この \((\text{I})\) をbase case,\((\text{II})\) をinduction stepと言います。

 いかにこのシステムを生徒たちに理解してもらうかが,指導者の腕の見せ所です。大山は

とある国で次の2つの法律を制定しました。
 \((\text{I})\) 1月1日は休日とする
 \((\text{II})\) 休日の翌日は休日とする
すると,この国は一年中毎日が休日ですね。

という例え話をよく用いています。

 さて,数学的帰納法はその仕組み上,漸化式との相性がとても良いわけです。「初項と漸化式が与えられて,一般項を予想→証明」という問題も数学的帰納法を使う定番ですね。
 そこで提案したいのが,漸化式が与えられていない問題であっても

漸化式を作ってから,数学的帰納法の証明に入る

という方法です。例えば

【#5】大山壇の入試問題Pick Up!「数学的帰納法」01

という問題において

\(a_n =7 \cdot 2^{2n-1}+3^{3n-1}\)

が満たす漸化式を最初につくってしまうのです。

 一般項と漸化式は1対1に対応するわけではないので,漸化式は様々なものが考えられますが,今回の証明に使いやすそうなものをウマくつくるというのも数列分野の式変形の良い練習になります。
 本問では,例えば

\(a_{n+1}-27a_n =-7\cdot 23\cdot 2^{2n-1}\)

という漸化式をつくれるので,これならinduction stepは明らかです。(解答例はこちら

変則的な数学的帰納法

 教科書で扱われることは少ないようですが,入試問題ではinduction stepが前述のものとは異なる形になる場合があります。例えば

  1. \(P(k)\),\(P(k+1)\) がともに成り立つならば \(P(k+2)\) が成り立つ
  2. \(P(k)\),\(P(k+1)\),\(P(k+2)\) がすべて成り立つならば \(P(k+3)\) が成り立つ
  3. \(P(n_0)\),\(P(n_0+1)\),\(P(n_0+2)\),…,\(P(k)\) がすべて成り立つならば \(P(k+1)\) が成り立つ

といった形のものは比較的頻出です。なお,①は二段仮定,②は三段仮定,③は全段仮定などと言われます。
 これらは,前節の話とあわせると,漸化式がどの形をしているかに依存するわけです。例えば,漸化式が隣接三項間なら二段仮定になるということです。

 このinduction stepの形によって必要なbase caseが変化するので,大山は

induction stepを先に説明してからbase caseを調べる

という順番で解答を書くことが多いです。
 つまり,前節の \((\text{I})\),\((\text{II})\) を,\((\text{II})\) → \((\text{I})\) の順に書くということです。(よくドミノ倒しに例えられるじゃないですか? だったら,ドミノは並べてから倒すものだと思うんですよ!)
 まぁ,\((\text{I})\) と \((\text{II})\) はバラバラに別のことを証明しているのだから順番はどうでもイイの です。

 さて,最近の大山のお気に入りの問題がこちらです。

【#5】大山壇の入試問題Pick Up!「数学的帰納法」02

 本間(1)は「よく見かける問題」に見えると思いますが,『手続きの暗記だけをしている』のか『正しく理解している』のかを判別できる良い問題です。あと(3)も,生徒たちはけっこう「気付かない」ですよ!(解答例はこちら


 第5回は以上になります。色々な証明方法の中でも,数学的帰納法は「特別なヒラメキを必要としない」書きやすい証明だと思うのですが,生徒たちは苦手にしがちです。しっかりと正しく理解させたいところですね。
 次回は今年の入試問題からPick Up!したいと思っています。お楽しみに♪

【大山 壇(おおやま だん)先生 プロフィール】
宇都宮北高校,東北大学理学部数学科卒。
2006年度から代々木ゼミナールの講師となり,現在は新宿本部校と札幌校に出講しています。対面・映像の授業の他にも,テキスト・模試・解答速報の作成なども行っています。
もっと毒をはいている大山を見たい方は,X(旧Twitter)をどうぞ!→ @dan_oyama_0206
《著書》
・『全国大学入試問題正解』(旺文社)解答執筆(京大,一橋大,東北大など)
・『整数分野別標準問題精講』(旺文社)
・『全レベル問題集 3 』(旺文社)
・『全レベル問題集 5 』(旺文社)
・『大山壇の基本から身につける計算力IA』(KADOKAWA)
・『大山壇の基本から身につける計算力IIB』(KADOKAWA)

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