特集記事(小中学校)

中学校

2024.04.08

【#21】若手先生の困り事相談 ~新年度のスタートアップの授業を考える①~

「佐藤寿仁先生と考える」では、授業づくりのポイントや教科書の使い方などについて、連載していきます。現場の先生方は、大変お忙しくて教材研究する時間が取りにくいところかと思います。少しお時間をいただき、立ち止まって一緒に考えてみませんか。(佐藤寿仁)

 今回は、若手の先生からいただいた困り事について、考えてみたいと思います。

新年度のスタートアップの授業を考える① 〜授業開きの前に〜

【#21】若手先生の困り事相談 ~新年度のスタートアップの授業を考える①~01

Q 新年度、数学の授業のスタートにあたり、どのような準備をすればよいでしょうか。授業開きとなる最初の数学の時間に向けての準備について教えてください。

 次の2つの点を踏まえて、授業づくりの見通しをたてましょう。

  • 年間指導計画などを概観し、育成を目指す資質・能力を確認しましょう。
  • 資質・能力を育成するための数学の学び方ついて考えましょう。

 いよいよ新年度が始まりました。担当する学年、また勤務する学校が変わったなど先生にとっても環境が変化する時期です。初めて学校に勤務する、という新任の先生もいらっしゃいますよね。不安もあると思いますが、数学の授業をどうしようかとワクワクしている先生が多いかと思います。
 さて、新学期が始まる前のこの時期、みなさんはどのような準備をされているでしょうか。校内の数学の先生で行われる授業のための打合せでは、どのようなことを確認し合うのでしょうか。また、ご自身が担当される学級や学年の数学の授業開き(新年度の最初の数学の授業)に向けての準備について悩まれることがあると思います。
 今回は、こうした新年度の準備についてご紹介します。

□作成した年間指導計画をもとに、授業で育成を目指す資質・能力を確認しましょう

 学校で作成した年間指導計画をもとに、まず、数学の学習内容について概観します。その際に、前年度とつながりのある内容について取り上げ、昨年度の学習に様子や状況について、先生どうしで確認し合うことが大切です。生徒の状況についてよいところや課題について伝え合うとよいでしょう。こうした確認を受けて、作成した年間指導計画については必要に応じて更新することがあってよいと思います。また、東京書籍のホームページには、教科書(新しい数学1〜3)に準拠した年間指導計画や評価規準の資料が掲載されています。こちらも併せて参考にしましょう。

 さらに、年間指導計画を見ながら、数学の授業を通して育成を目指す資質・能力について確認しましょう。数学的に考える資質・能力については、中学校学習指導要領(平成29年告示)解説数学編にあります。しかし、学校または皆さんが数学の授業を通して、今年度どのような力を特に付けたいかについて話し合うことが大切です。そうすることで、数学の授業で重視する視点が具体化されることでしょう。例えば、帰納、演繹、類推といった数学的推論をする生徒の姿を大切にした授業や統合・発展的に考えて問題解決する授業など数学的な見方・考え方(※)を働かせて問題解決する授業など、数学の授業で求める生徒が主になって数学を用いて問題解決する姿をイメージし、授業づくりについて見通すことができるでしょう。

  • 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説数学編において、数学的な見方・考え方とは「事象を、数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、統合的・発展的に考えること」と説明されています。

□資質・能力を育成するための授業づくりのための生徒の学び方を確認しましょう

 数学的な見方・考え方を働かせることで、数学的に考える資質・能力を育成するために、数学の学び方について生徒に意識づけることが大切です。中学校学習指導要領(平成29年告示)解説数学編には問題発見・解決の過程として示した数学的活動(図1)があります。この過程を遂行することで、数学的に考える資質・能力が育成されるといわれています。

【#21】若手先生の困り事相談 ~新年度のスタートアップの授業を考える①~02
図1 数学的活動

 数学の学び方は、実際の授業においては生徒の活動につながるものです。生徒が主体的に学ぶための「数学の学び方」については、各学年の教科書(新しい数学1〜3)の冒頭に下のように紹介されています。全ての学年にあることに大きな意味があります。

【#21】若手先生の困り事相談 ~新年度のスタートアップの授業を考える①~03
「新しい数学3」 大切にしたい数学の学び方 p.6〜7

 これは、生徒が主役となる授業のための数学の学び方について説明したものになります。この学び方を参考に、今年度どのような授業づくりを進めていくかを自分や学校の数学の先生たちと一緒に考えてみるのはどうでしょうか。そうすることで、授業の各場面において何を大切にすればよいか具体的にイメージすることができると思います。例えば、学校として「生徒が問題や課題を見いだし取り組む授業を重視したい」となれば“問題をつかむ”や“見通しをたてる”の場面を参考にする、「協働的な学びを大切にして、数学的に説明する力を育成したい」であれば“問題解決する”の“友達の考えを知ろう”や“話し合ってみよう”などが参考になりますね。これらのページをみながら、数学の授業について考えてみることをお薦めします。

 次回は、授業開きの前にできる準備としてできることを、さらに紹介します。

※参考資料

【佐藤寿仁先生 略歴】
岩手県公立中学校で11年、岩手大学教育学部附属中学校で6年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。学校教育の充実や現職教員の職業能力開発の支援から、全国調査など国の教育のアセスメントに関わり、これからの教育について幅広く研究を進めている。

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