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中学校
2023.10.06
【#12】若手先生の困り事相談 ~学習評価「主体的に学習に取り組む態度」を考える~
「佐藤寿仁先生と考える」では、授業づくりのポイントや教科書の使い方などについて、連載していきます。現場の先生方は、大変お忙しくて教材研究する時間が取りにくいところかと思います。少しお時間をいただき、立ち止まって一緒に考えてみませんか。(佐藤寿仁)
今回は、前回に引き続き現場の先生からいただいた困り事について、考えてみたいと思います。
学習評価の工夫を考える 〜「主体的に学習に取り組む態度」編その②
Q 「主体的に学習に取り組む態度」の評価について悩んでいます。生徒のノートやレポート、テストなど様々な方法があるとは思うのですが、実際にはどうすればよいのでしょうか。
A レポートや学習の振り返りなど、具体の姿で評価することができる場面の設定を工夫することを意識してみましょう。
前回は「主体的に学習に取り組む態度」の評価について、特に単元の指導計画を立てる際に大切にしたいことについてのお話でした。現行の学習指導要領から、「関心・意欲・態度」が「主体的に学習に取り組む態度」に変更された。数学の授業での発言した回数や課題(宿題)やレポートの提出状況などを根拠とした評価とするのはなく、生徒の“数学への態度”について評価することとすることが大切であることをお伝えしました。国立教育政策研究所(2020)では、「主体的に学習に取り組む態度」の評価について、下のような2つの側面があるとしています。
- ① 知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとしている側面
- ② ①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面
参考:「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校数学
この2つの側面で生徒の姿を評価するのですが、ノートやレポート等における記述、授業中の発言、教師による行動観察や生徒の自己評価などを評価場面として位置付け、具体的な姿でみとることが大切です。
「第1学年 4章数量の関係を調べて問題を解決しよう[比例と反比例]」を例に考えてみましょう。東京書籍が公表している令和3年度年間指導計画作成資料数学科の「1年学習指導計画・評価規準例」をみますと、4節には2つの評価規準(赤枠)が設定されています。新しい数学1 p145,146「待ち時間の予想はできるかな(深い学び)」を扱った授業では、ポップコーンを買い終わるまでにかかる待ち時間を予想するために比例を活用しようすることを示す発言やノートの記述等で評価することが考えられます。授業中の生徒の発言は限られますので、学級など全ての生徒の状況を記録として残すことは難しいです。
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/chu/list/keikaku.html
ポップコーンを買い終わるまでにかかる待ち時間について問題解決をした後に、新しい数学1 のp.146の❺を取り上げます。この内容は、授業内で取り組むものとすることも考えられます。しかし、時間が足りず、授業の最後に先生から比例の考えを使って予測できるものの例を示して終わってしまうということはありませんか。そこで、この問いをレポート課題のようにして提示し、取り組む期間を設定して生徒の活動と位置付けることが考えられます。さらに、比例と反比例の利用が終わった後に「比例や反比例をどのような問題場面の解決に利用できそうか」と問うこともできます。これらのことに生徒が取り組み、次のような態度について、レポートの記述でみとるとよいでしょう。
- 日常の事象の中にある伴って変わる二変量に着目しようとしている
- 見いだした二変量に比例や反比例の関係を捉えようとしている
- 比例や反比例の関係を用いて解決しようとしている
学習の振り返りの場面においても、主体的に学習に取り組む態度の観点でみとることができます。授業の最後に、振り返りシートに記述する場面をみることがあります。この場面においては、授業の感想を求めるのではなく、「大切な考え」や「もっと知りたいこと」のような数学に向き合うことができるよう問いかけ、学んだことや問題解決の過程を振り返る記述をみとることが大切です。この振り返りの記述を教師がみとり、主体的に学習に取り組む態度についての状況を把握するのです。なお、この振り返りは、毎回の授業で記述を求めるかどうかはよく検討してほしいと考えています。ある程度の時間(授業等)のまとまり、例えば、教科書でいうと節などに分けて取り組むが考えられます。
※参考資料
- 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料 中学校数学
- 東京書籍 「新しい数学1」
【佐藤寿仁先生 略歴】
岩手県公立中学校で11年、岩手大学教育学部附属中学校で6年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。学校教育の充実や現職教員の職業能力開発の支援から、全国調査など国の教育のアセスメントに関わり、これからの教育について幅広く研究を進めている。
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