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中学校

2023.08.10

【#10】若手先生の困り事相談 ~夏休みにできる授業づくりを考える~

「佐藤寿仁先生と考える」では、授業づくりのポイントや教科書の使い方などについて、連載していきます。現場の先生方は、大変お忙しくて教材研究する時間が取りにくいところかと思います。少しお時間をいただき、立ち止まって一緒に考えてみませんか。(佐藤寿仁)

 今回は、若手の先生からいただいた困り事について、考えてみたいと思います。

夏休みにできる授業づくりを考える

【#10】若手先生の困り事相談 ~夏休みにできる授業づくりを考える~01

Q 学校が夏休みに入りました。授業の準備として、どのようなことを取り組むとよいのでしょうか。

 次のポイントを意識してみましょう。

  1. ① これまでの授業実践を振り返り、夏休み以降の「指導や評価」の計画を立てる
  2. ② 教科書等を活用して教材研究を深め、授業づくりを進める

 学校が夏休みとなり、部活導や生徒の補講などの学習支援、そして、教員研修への参加など様々取り組まれていると思います。夏休み以降の学習について、見通しを持つことも大切ですね。今回は、そんな夏休みにできる授業の準備の進め方について紹介します。

① これまでの授業実践を振り返り、夏休み以降の「指導や評価」の計画を立てる

 1学期は、多くの学校で「数と式の領域」の授業を行ってきたと思います。夏休みには個々の生徒の学習状況を再確認して、今後の授業の進め方を考えるとよいでしょう。例えば、学習評価において実施した小テストや単元テスト等の観点別での評価の状況をふり返り、生徒個々の学習支援のあり方や課題を明らかにすることが考えられます。学年の授業を複数の先生で担当されている場合には、生徒の学習状況を共有することもよいですね。学習内容の理解が十分に満足できる生徒には、それをさらに伸ばすこと、課題がある生徒にはどのように支援していくのかを考え、指導の見通しを持つことが大切です。

 さらに、これまでの授業を踏まえて振り返って、授業の進め方についても検討してみましょう。授業では、問題発見・解決の過程である数学的活動の充実が求められています。教科書を活用して、生徒が問題解決する授業を行うための課題を明らかにしておくとよいです。

【#10】若手先生の困り事相談 ~夏休みにできる授業づくりを考える~02
▲算数・数学の学習過程のイメージ

 夏休み以降は「関数領域」「図形領域」の学習が中心となります。既に作成してある単元の指導計画について、もう一度確認してみましょう。その際、生徒の実態を踏まえた学習内容と時間数の整合性や評価方法について確認することが考えられます。特に学習評価は、小テストなどの記録に残す評価について、その内容やタイミングを検討することが大切です。

② 教科書等を活用して教材研究を深め、授業づくりを進める

 これまで毎日の授業づくりを進める上で、教材研究に十分な時間をとることができなかったと反省する先生はいませんか。この夏休み期間に、ぜひ今後の授業づくりについて考えてみましょう。

 普段の授業を準備する際には、教科書の該当ページについて確認し、その内容における教材研究を進めていると思います。教科書には他にも様々な内容が記載されており、それらを読むことが授業づくりのヒントとなります。新しい数学2のp.193以降には、各単元における「深い学び」のページにおける大切にしたい数学的な見方・考え方について説明されていますね。本来であれば、生徒が「深い学び」の学習後の振り返りとして使用するページかもしれませんが、指導される先生が事前に読むことで授業づくりの参考になると思います。

 数学的に考える資質・能力を育成するために、生徒が数学的な見方・考え方を働かせることが大切にされています。この「見方・考え方」を具体的にどう捉えればよいかについてお悩みの先生もいらっしゃるのではないでしょうか。例えば、教科書p.196の「1次関数とみなして予想する」をみてみると、ある関係を理想化したり単純化したりして考えて関数とみなすことについて、その具体を説明されています。ここではグラフをみて単純化することについて取り上げられていますが、その単純化があくまで仮定して考えていることである。また、その適用範囲について事象に関連させて確認する必要性などが示されています。これは、指導者である先生が留意するところでもあり、この問題解決での大切な見方でもあります。実際に授業する際には、生徒が説明して伝え合ったりする姿を確認するための大切な数学での姿ですね。

【#10】若手先生の困り事相談 ~夏休みにできる授業づくりを考える~03
▲新しい数学2 p.196

 また、教科書p.197「説明の根拠をふり返る」では、証明活動での生徒の理由の説明について書かれており、実際の授業においてどのような説明を評価すればよいかについての視点となります。生徒がどのような数学的な見方・考え方を働かせるとよいのかということだけでなく、先生が鍛える数学的な見方・考え方をイメージすることが大切です。そのことにより、授業での発問や支援などを洗練させることができますね。

【#10】若手先生の困り事相談 ~夏休みにできる授業づくりを考える~04
▲新しい数学2 p.197

 教科書には様々なことが取り上げられています。しかし、普段はこのようなページまで時間をかけて読むことは難しいと思います。学校が夏休みの期間に読んでみてはいかがでしょうか。そのときには、1人で考えるだけでなく同じ学校の数学の先生や他の学校の先生方と一緒に教科書を読みながら、夏休み後の授業についてアイディアを出し合うといったような場があるとよいですね。

※参考資料

  • 中学校学習指導要領(平成29年告示)解説数学編
  • 東京書籍 「新しい数学2」

【佐藤寿仁先生 略歴】
岩手県公立中学校で11年、岩手大学教育学部附属中学校で6年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。学校教育の充実や現職教員の職業能力開発の支援から、全国調査など国の教育のアセスメントに関わり、これからの教育について幅広く研究を進めている。

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