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- 【#9】若手先生の困り事相談 ~学習評価「思考・判…
「佐藤寿仁先生と考える」では、授業づくりのポイントや教科書の使い方などについて、連載していきます。現場の先生方は、大変お忙しくて教材研究する時間が取りにくいところかと思います。少しお時間をいただき、立ち止まって一緒に考えてみませんか。(佐藤寿仁)
今回も引き続き、若手の先生からいただいた困り事について、考えてみたいと思います。
学習評価の工夫を考える 〜「思考・判断・表現」編その②〜
Q 「思考・判断・表現」を評価するためにはテストに記述問題を取り入れたほうがよいと考えています。問題づくりや採点方法をどうすればよいでしょうか。
A 次の2つのポイントを意識してみましょう。
- ① 数学的に「何を」説明するのかについて明確にした問題を作成する
- ② 「思考・判断・表現」を評価するための基準をつくる
前回に引き続き、学習評価の観点の「思考・判断・表現」を評価についてのお話。今回は、実施したテストを受けて、どのように評価してフィードバックするかについて紹介します。
② 「思考・判断・表現」を評価するための基準をつくる
「思考・判断・表現」について評価をするために、学校で作成するテストに記述問題を出題することについてお話しました。その際に、作題者が何を数学的に説明するのかを明確にして問題を作成することをお伝えしました。具体的には「事柄や事実の説明」「方法・手順の説明」「理由の説明」があることを紹介しました。しかし、実際に「思考・判断・表現」を評価する問題を出題すると、どのように採点するか悩みませんか。正誤のみでなく、記述における数学的表現を確認しなければなりませんね。採点については、テストが終わってから考えるのではなく、採点の基準は作問時に検討しておくことが大切です。
○第1学年「文字式」における評価問題の採点について
前回、1年生の「文字と式」の「思考・判断・表現」を評価する問題として、下のような問題例を紹介しました。この問題について採点するためにはどのような採点の基準が考えられるでしょうか。
このことについて、そうたさんとはるかさんは、下のように話し合っています。
そうたさん: | 「\(n\) が整数のとき、\(2n\) は偶数を表していることを学習したね。」 |
はるかさん: | 「そうだね。偶数は数字を使っていろいろに表せるけど、文字を使うと\(2n\) で表現できるよね。たくさんあるものを1つの式で表現できるなんて、文字式は便利だね。」 |
そうたさん: | 「うん。もし、2つの続いた偶数を表したいときは、どう表せばいいのかな。」 |
はるかさん: | 「具体的には2、4や16、18などいろいろあるけど、文字を使って簡単に表すことができないのかな。」 |
この問題は、「理由の説明」としています。解答は「ある偶数を基準にして、その次に続く偶数はある偶数よりも2大きい」といった関係に着目して説明していれば正答としてよいと考えます。具体的には下のように、主題の趣旨のもと、正答を設定します。
・出題の趣旨: | いろいろな整数を、文字を用いた式で表したり、式が表す数を読み取ったりすることができるかどうかをみる。 |
・正答例: | ウ を選択している。 偶数は「\(2\times\mathrm{(整数)}\)」と表されるので、最初の偶数は \(n\) を整数として \(2n\) と表すことができる。連続する偶数は、2ずつ増えるので、次の偶数を 「\(2\times\mathrm{(整数)}+2\)」とするから \(2n+2\) と表すことができる。 |
偶数の意味を示した上で、連続する偶数が持つ特徴を文字式での表現に関連付けて説明しているかどうか記述しているかどうかを確認します。予想される生徒の記述について、下のように整理することができます。
類型 | 規 準 | 実際の解答例 |
---|---|---|
Ⅰ | いくつかの具体例で偶数の構成を示し、偶数の意味や連続する偶数について一般的に捉え、その考え方が選択した文字式に適用されていることを説明している解答 | 連続する偶数について、例えば、下のように考える。 \(2=2\times 1\) \(4=2\times 1+2=2+2\) \(6=2\times 2+2=4+2\) \(8=2\times 3+2=6+2\) 偶数は「\(2\times \mathrm{(整数)}\)」と表されるので、最初の偶数は \(n\) を整数とすると、\(2n\) と表すことができる。連続する偶数は、2ずつ増えるので、次の偶数を「\(2\times \mathrm{(整数)}+2\)」とするから、\(2n+2\) と表すことができる。 |
Ⅱ | 偶数の意味や連続する偶数について一般的に捉え、その考え方が選択した文字式に適用されていることを説明している解答 | 偶数は「\(2\times \mathrm{(整数)}\)」と表されるので、最初の偶数は \(n\) を整数として \(2n\) と表すことができる。連続する偶数は、2ずつ増えるので、次の偶数を「\(2\times \mathrm{(整数)}+2\)」とするから \(2n+2\) と表すことができる。 |
Ⅲ | 具体例を示し、偶数の意味や連続する偶数について一般的に捉え、その考え方が選択した文字式に適用されていることを説明している解答 | 2つの続いた偶数は、例えば、最初の偶数を6とすれば、次にくる偶数は2増えて8となる。偶数は「\(2\times \mathrm{(整数)}\)」と表されるので、最初の偶数は \(n\) を整数として \(2n\) と表すことができる。連続する偶数は、2ずつ増えるので、次の偶数を「\(2\times \mathrm{(整数)}+2\)」とするから \(2n+2\) と表すことができる。 |
Ⅳ | 偶数や連続する偶数についての具体的な数を例にして説明しているが、その考え方が選択した文字式に適用されていることを説明している解答 | 2つの続いた偶数は、例えば、最初の偶数を6とすれば、次の偶数は8となる。だから、連続する2つの偶数は、\(2n\)、\(2n+2\) と表すことができる。 |
生徒が上のⅠ〜Ⅳのように記述したとき、どれを正答としますか。例えば、Ⅱ、Ⅲについては、偶数の意味や連続した偶数について一般的に説明できていることから、評価基準として「B」とし、概ね満足できる状況とします。Ⅰのような記述は、具体的な数を取り上げ、連続する偶数について構造的に理解し、それに関連付けて2つの続いた偶数を一般的に捉えているので「A」とし、十分満足できると状況と判断することができます。Ⅳについては、偶数や連続する偶数について一般的に捉えているような記述が確認できないため、努力を要する状況として「C」とするのはどうでしょうか。
このように、生徒の解答についていくつか想定し、数学的に正答と認めることができるかどうか検討し、その上で評価基準を設定することが大切です。今回のように作成したテスト問題をどのような規準や基準で評価するのかについて、複数の先生方で検討してみることもよいでしょう。
※参考資料 東京書籍 令和3年度 年間指導計画作成資料
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/chu/list/keikaku.html
【佐藤寿仁先生 略歴】
岩手県公立中学校で11年、岩手大学教育学部附属中学校で6年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。学校教育の充実や現職教員の職業能力開発の支援から、全国調査など国の教育のアセスメントに関わり、これからの教育について幅広く研究を進めている。
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