特集記事(小中学校)

中学校

2023.06.27

【#6】若手先生の困り事相談③ ~学習評価「知識・技能」を考える~

「佐藤寿仁先生と考える」では、授業づくりのポイントや教科書の使い方などについて、連載していきます。現場の先生方は、大変お忙しくて教材研究する時間が取りにくいところかと思います。少しお時間をいただき、立ち止まって一緒に考えてみませんか。(佐藤寿仁)

 今回は、若手の先生からいただいた困り事について、考えてみたいと思います。

学習評価の工夫を考える〜「知識・技能」編〜

【#5】若手先生の困り事相談③ ~学習評価「知識・技能」を考える~01

Q 学期末が近づき、これから期末テストを作成します。テストづくりでの大切なポイントはありますか?

 次の2つのポイントを意識してみましょう。

  1. ① 指導計画に基づいた学習評価を考え、実行する
  2. ② 「概念的な知識」と「事実的に使う知識」を評価する問題を取り上げる 〜その1〜

 学校では体育祭などの学校行事や部活導の大会などが終わるころでしょうか。学期末や夏休みが近づき、学校によっては期末テストや単元テストなど実施するでしょう。多くの中学校において、先生がペーパーテスト(以下、「テスト」)を作成します。今回は、そのテストづくりにおいて、大切にしたいポイントを紹介します。

① 指導計画に基づき、3つの評価の観点をバランスよく考えたテストを作成する

 「指導と評価の一体化を大切にしましょう」、よく聞きますね。指導していないことは評価することができませんので、テストを作る際には、取り上げる問題についてよく検討しなければなりません。期末テストや単元テストは「総括的評価」と位置付けられます。これまで小テストやノートの確認など、記録として残してきた評価をもとに生徒の理解の状況を確認しながら、どの問題を取り入れるかを考えます。

 夏休み前までは「数と式」の領域の学習でしょうから、作成したテストが学習評価の3つの観点(「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」)の内、「知識・技能」の問題がどうしても多くなってしまうことはないでしょうか。特に文字式を計算する、方程式を解くなどの数学的に処理するといった計算の問題ばかりになってしまうことはありませんか。もちろん均等にすればよい、というものでもありません。テストを作る前には次のことを考えるのが大切です。

  1. ① 何を指導し、何を総括的評価とするかを検討する。
  2. ② 設定した単元の目標や各時間の目標について再確認する。
  3. ③ 資質・能力の育成をどのような問題で評価するか考える。

 テストで生徒が解答することのできる時間は決まっていますので、生徒が充分に考えることができる時間を保障できるよう問題数についても吟味することが大切です。

② 「知識・技能」の習得をどのような問題で評価するか 〜その1〜

 

 「知識・技能」の評価においては、数学的に処理をする技能の側面について問題を作るのが容易で、実際には教科書や配付する問題集などから設定した目標に合致するものを選択し、テストを作成するのではないしょうか。一方で、知識に当たる問題についてはどうでしょう。知識というと数学用語を覚えているかどうかを問うこととして問題を作成していませんか。「知識・技能」の評価については、「事実的な知識の習得を問う問題」と「知識の概念的な理解を問う問題」とのバランスに配慮に工夫することが大切です。そのような問題の作成について、考えてみましょう。

 例えば、第2学年第1章「式の計算」において、多項式の加法や減法について考える場面があります。ここでは、文字式の計算を進めるために「同類項」について確認します。このことの理解について評価するために、教科書を引用して、次のような問題を作ることができます。

【#5】若手先生の困り事相談③ ~学習評価「知識・技能」を考える~02
(答え) 同類項

同類項という用語の意味を理解について、下のように問うこともできます。

【#5】若手先生の困り事相談③ ~学習評価「知識・技能」を考える~03

(答え)
 \(10x^2\) と \(-3x\) は、文字の部分が異なり同類項ではないため、これ以上計算を進めることができない。

 この問題は、文字式の正しい計算について指摘できるかどうかをみる問題ですが、計算ができる・できないということだけでなく、説明を求めることで同類項の意味の理解についても確認することができます。得た知識を事実的に使うことができるかどうか評価することになるのです。

 このようにして、単に覚えているかどうかだけでなく、同類項における本質的な意味について理解しているかどうか評価するための問題は大切です。その際、教科書を参考にすることで単に言葉を覚えているかどうかだけでなく、「事実的な知識の習得を問う問題」を作成することができます。

【佐藤寿仁先生 略歴】
岩手県公立中学校で11年、岩手大学教育学部附属中学校で6年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。学校教育の充実や現職教員の職業能力開発の支援から、全国調査など国の教育のアセスメントに関わり、これからの教育について幅広く研究を進めている。

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