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中学校

2023.07.01

【#7】若手先生の困り事相談➃ ~学習評価「知識・技能」を考える②~

「佐藤寿仁先生と考える」では、授業づくりのポイントや教科書の使い方などについて、連載していきます。現場の先生方は、大変お忙しくて教材研究する時間が取りにくいところかと思います。少しお時間をいただき、立ち止まって一緒に考えてみませんか。(佐藤寿仁)

 今回も前回に引き続き、若手の先生からいただいた困り事の「学習評価」について、考えてみたいと思います。

学習評価の工夫を考える 〜「知識・技能」編その2〜

【#7】若手先生の困り事相談➃ ~学習評価「知識・技能」を考える②~01

Q 文字式や方程式を解くなどの計算問題の難易度や問題数をどうするかについて悩んでいます。テストを作成する際に、何かポイントはありますか。

 「概念的な知識」と「事実的に使う知識」を評価する問題を取り上げることを意識してみましょう。

 前回は、学校で作成するペーパーテスト(以下、「テスト」)について取り上げました。学習評価の観点の「知識・技能」について、「概念的な知識」「事実的に使う知識」の評価をするためのテスト問題の作成のポイントを紹介しました。今回は、引き続き「知識・技能」、特に、数学的に処理することに関するテスト問題の作成について紹介します。

「知識・技能」の習得をどのような問題で評価するか 〜その2〜

 学校で作成するテストでは、学習評価の観点における「知識・技能」の問題は取り入れやすく、他の観点と比べても評価が容易に感じることはないでしょうか。テスト問題の作成する際は、先生が一から作るというよりも、教科書や生徒に配付した問題集等を参考にすることが多いと思います。教科書には「基本の問題」「章の問題」などたくさん掲載されていますね。それらをうまく活用することも大切です。2つ例を紹介しましょう。

○連立方程式における作成例

 「新しい数学2」p.54 2章連立方程式の「章の問題A」。問題数もありますので、全てを取り上げるというよりもねらいや指導計画に応じて授業で取り扱うことでしょう。その大問4に博物館の入館料に関する問題があります。これは、連立方程式を利用して解決する問題ですね。連立方程式と答えを記述するのであれば「思考・判断・表現」を評価します。

【#7】若手先生の困り事相談➃ ~学習評価「知識・技能」を考える②~02

 これまで、多くの生徒が連立方程式をつくることに課題があるといわれてきました。そこで「思考・判断・表現」として式を問うのではなく、その式はどんな数量に着目してつくることができたのかを問うことも考えられます。例えば、下のような問題をつくることができます。

【#7】若手先生の困り事相談➃ ~学習評価「知識・技能」を考える②~06

※参考:平成26年度全国学力・学習状況調査数学A大問3(3)

 問題文や与えられた式を読み解き、どのような数量の関係に着目しているのか、また、相等関係を見いだしているのかなど、「知識・技能」として評価するのです。

○平方根における作成例

 次に、数学的に処理することに関するテスト問題の作成について紹介します。学んだ平方根の計算について的確に処理することができることは、生徒が直面する様々な問題解決を進めるために必要ですね。数学的に処理をすることができるかどうかについて評価することを積極的に取り組むべきだと考えています。大切なことは、単に問題を並べるのではなく、生徒の理解の状況を把握できるようにすることです。
 「新しい数学3」p62の基本の問題5を見てみましょう。

【#7】若手先生の困り事相談➃ ~学習評価「知識・技能」を考える②~04

 (1)から(8)まで根号をふくむ式の加法ではありますが、一つ一つの式や数値は大変練られていると思います。同じ数の平方根をふくんだ式を、文字式の同類項をまとめることと同じようにまとめる計算、根号の中の数が異なる場合の計算、有理化が必要な計算など意図的に配列されています。テストには多くの問題を出題したいと考えるかもしれませんが、一つの計算問題でどんな力を評価しようとしているのかについて吟味することが大切です。テストは限られた時間での実施ですので、限られた問題数で生徒の理解や処理の状況を確認することができるように工夫することが必要なのです。

 その上で、テスト終了後に、生徒自身の理解度について振り返る場面や機会の設定を勧めます。例えば、誤った問題を取り上げ、もう一度解くなどするテストノートを作ってもよいでしょう。生徒が問題の正誤を知るだけでなく、誤った解答を振り返ることができるようにすることが大切です。その際に、一つ一つの問題で求めている力が明確であれば、それらを振り返る場面がより効果的なものになります。教科書にある問題、その配列から出題の趣旨を読み解き、参考にするとよいでしょう。

【佐藤寿仁先生 略歴】
岩手県公立中学校で11年、岩手大学教育学部附属中学校で6年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。学校教育の充実や現職教員の職業能力開発の支援から、全国調査など国の教育のアセスメントに関わり、これからの教育について幅広く研究を進めている。

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