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2026.02.26

【#2】通信制のイマとココから 自学自習支援:「学習材」の重要性と実践紹介

 こんにちは。愛知県立旭陵高校/早稲田大学大学院の加藤圭太です。
 第2回の今回は,「自学自習支援:「学習材(learning materials)」の重要性と実践紹介」がテーマになります。

 前回は,通信制高校と通学制(全日制・定時制)高校では,対面指導と自学自習の主従の関係が入れ替わるということをお話させていただきました。
 通信制高校において主(メイン)となる自学自習支援を考えるために,はじめに「教材」「学習材」を,以下のように定義します。

【#2】通信制のイマとココから 自学自習支援:「学習材」の重要性と実践紹介01

 通信制高校の教員には,「このテキストやプリントを使ってどのように指導しようか」という「教材研究」に加えて,「このテキストやプリントを使って生徒が自学自習で学べるか」という視点による「学習材研究」も必要になります。
 同じテキストやプリントでも,教材か学習材のどちらと捉え,どちらのレンズを通して見るかによって,その見え方はかなり違ってきます。

 そして,こうした学習材研究は数学が苦手な生徒の視点に立って行うことが重要かつ難しいポイントとなります。
 数学に熟達した教師の目には学習材として十分に成立しているように見えたとしても,数学が苦手な生徒の立場に立てば,「この解説では十分に理解できないかもしれない」「具体例を示されないとイメージできないかもしれない」「もう少し視覚的な解説が必要かもしれない」などといった考えが浮かんでくるかもしれません。

 教材研究は教師自身が自分の視点から対象物を見つめるのに対して,学習材研究は他者(数学が苦手な生徒)の視点から想像力を働かせて対象物を見つめなければならない点に,難しさがあります。
 また,既存のテキストやデジタルコンテンツの学習材研究の結果,それらの不十分な点は教師自身による「学習材開発」によって補うことが,通信制高校の教師には求められます。

 ここからは,加藤がこれまでに開発した学習材や通信制高校における学習材の事例を紹介させていただきます。

① 印刷学習材(Web学習書:解説PDF)

【#2】通信制のイマとココから 自学自習支援:「学習材」の重要性と実践紹介03
▲実際のプリントはこちら

 通信制高校では日々の授業がないため,授業があれば板書で解説したいことや口頭で補足したいことは,全て事前に学習材の中に記載しておくことが必要になります。
 そして,生徒が思考のプロセスを追えるように,考え方の軌跡を紙面に残しておくことも重要です。
 しかし,印刷学習材にはどんなにわかりやすく記述しても,学習内容に関する事前知識が不十分な学習者にとっては,理解することが困難であるといわれています(鄭・久保田, 2006)。
 特に,生徒の苦手意識の高い二次関数や三角関数の単元では,②や③に示すような動的なデジタル学習材が必要になります(加藤・森田, 2025)。

② 動画学習材(手元動画)

【#2】通信制のイマとココから 自学自習支援:「学習材」の重要性と実践紹介05
▲実際の動画はこちら

 動画学習材は,一般的な「講義動画」と上記の「手元動画」の2種類を開発しました。
 手元動画は,生徒がワークシートに動画上の手書き文字と同じように書き込みをしながら視聴することで,より主体的に学習できるようにと考えて開発した学習材です。
 これらの動画学習材と先程の印刷学習材も含めた3種類の学習材を用意することで,生徒の多様な学習スタイルに合わせられるようにしています。

③ アニメーション学習材

【#2】通信制のイマとココから 自学自習支援:「学習材」の重要性と実践紹介07
▲実際のアニメーションはこちら

 このアニメーション学習材は,長野西高校(通信制)数学科の市川先生が開発したもので,2次関数と2次不等式の関係が動的なアニメーションによって解説されています。
 授業があれば板書しながら解説できることも,通信制高校の場合にはこうしたアニメーション学習材を使っていくことも必要になります。

 ここまでご紹介させていただいたように,通信制高校では学習材研究と学習材開発に関する専門性が数学教師に求められます。
 しかし,こうした専門性は通信制高校に限らずとも,反転授業の事前学習用の課題や自己ペース学習を実施する場合において,どの課程や学校種においても「学習材」という視点や考え方は重要になります。
 ぜひお手元のテキストやプリントを,学習材の視点で見つめていただければと思います。


 次回のテーマは,「個に応じた指導(Personalized Instruction)の必要性と実践紹介」となります。
 最後までお読みいただき,ありがとうございました!

【参考文献】

  • 鄭仁星, 久保田賢一 (2006): 遠隔教育とeラーニング, 北大路書房.
  • 加藤圭太, 森田裕介 (2025): 通信制高校の数学教師が必要性を認識する専門的知識の一検討―フォーカス・グループによるデータ収集と TPACK フレームワークを用いた質的データ分析を通して―, 科学教育研究, 49, 4, 345-362.https://doi.org/10.14935/jssej.49.345
【加藤 圭太(かとう けいた)プロフィール】

通信制のイマとココから

 愛知教育大学を卒業後,県立高校で数学教師としてキャリアをスタート。当時はサッカー指導に没頭し,「教えることは,自分でプレーするよりも何倍も難しい…」と頭を抱える日々を過ごしていました。 その後,想定外の異動で現在の愛知県立旭陵高校(通信制)へ。そこで出会った「通信教育」という仕組みの持つ大きな可能性に魅了され,2020年には熊本大学大学院教授システム学専攻(フルオンラインの社会人大学院)へ入学。
 現在は,早稲田大学大学院の博士課程で通信制高校の研究を継続しています。近い将来の夢は,100kmウルトラマラソンの完走と,本場フィンランドのサウナに入ることです。
researchmap:https://researchmap.jp/keita-kato

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