特集記事(高校)

高校

2026.02.05

【2026年度】大学入学共通テストの振り返りと分析〔数学Ⅱ,数学B,数学C〕

筑波大学附属駒場中・高等学校
須藤 雄生 先生

 本稿では,前回 の「数学I,数学A」に続き,高校現場の一教員として,今年度の「数学Ⅱ,数学B,数学C」の問題を振り返り,今後の教材開発や授業に生かしていけそうなことを検討していきたいと思います。

数学Ⅱ,数学B,数学C

第1問 図形と方程式(数学Ⅱ)

 2次式と1次式の和や差が描く図形に関する問題でした。いわゆる曲線束のアイデアが道具箱に入っていれば,最初の時点で2つの円を「方程式 \(x^2+y^2-7y+k(2x-5y+25)=0\)  を \(k=\pm 1\) で止めたもの」と考えることができ,見通しが良くなります。むしろ見通しが良くなりすぎて(2)の(ii)まで誘導が待ちきれず,解きながら,さっき通り抜けた裏道をわざわざ引き返し,表通りに立っていた道案内の看板をもう一度読め,と言われたような感覚におちいった受験生もいたかもしれません。
 個人的には(i)と(ii)は(たしかに問いの構造として並列ではあるのですが)順番が反対でも良かったかな,と思います。作業としての難易度を考えると,たしかに(i)→(ii)の順になってしまうのも理解はできるのですが,(iii)や(iv)を解くときに戻って考える対象が(ii)ではなく(i)になっていて,「見通しは良いが,歩いて行くには微妙に遠い」というもどかしい感覚もありました。

第2問 三角関数(数学Ⅱ)

 和積の公式を現地調達し,適用問題を挟んで,3つの正弦波の合成を考えるという構成になっていました。太郎と花子がグラフ描画ツールを使うという設定で,\(a=0.5\),\(a=1.0\),\(a=1.5\) の場合が図として示されていたので,これを使うと最後の空欄 [セ] の検算に多少は役立つか( \(a=\cfrac{5}{6}\pi\) をおよそ \(a=2.5\) と見積もる)と思ったのですが,太郎は「3つのうち2つの関数を和積で合成すると残り1つの定数倍になりそう」のようなことを思わせぶりに言い残しただけで立ち去ってしまいます。「学習の過程を重視した出題」であればこの太郎の発言はあまりに唐突で非現実的なので,あとに続く設問への流れ上,きっと「選抜試験としての制約」から言わされてしまったのでしょう。たいへん損な役回りです。
 もっとも,「3項からなる対象において,第1項と第3項を組み合わせると第2項に揃う」ということ自体は,高次式や数列を扱う際などに繰り返し登場し,広い範囲で応用が利く良い発想なので,太郎にしてみれば「具体的に『1番目と3番目』と言いたかったのに大人の事情で止められ,『3つのうち2つ』という中途半端なことしか言わせてもらえなかった」というところでしょうか。
 閑話休題,\(a\) の値を変化させながらグラフを調べること自体はたいへん有意義で,特にこのまま続けていけば \(a=2.1\) 付近でいったんグラフが真っ平らになることも観察できます。あとから計算するとこの \(2.1\) という値はすなわち \(\cfrac{2}{3}\pi\) のことと分かるのですが,一本道で「公式を覚えて適用」を繰り返すような表面的な学習の形から抜け出せる好機として,授業でこの素材を活かしたいものです。

【2026年度】大学入学共通テストの振り返りと分析〔数学Ⅱ,数学B,数学C〕01
GRAPES-light

第3問 微分法・積分法(数学Ⅱ)

 導関数と原始関数の関係を,計算量を削ぎ落としてグラフの概形に着目してとらえさせるという,共通テストではおなじみになりつつある題材です。今年度については,互いに関連していない2つの小問(1)(2)が並ぶ形になっています。
 (1)と(2)の出題順については,第1問に続いてこのセット二度目の「順番はこれでよかったのか,反対順で出題する手もあったのではないか案件」かと思います。こちらのほうは第1問とは異なり,空欄を埋めるだけなら(2)のほうがむしろ考えやすいようにも感じましたので,難易度順というよりは,(2)→(1)の順だと小問同士が関連していると誤解させてしまう恐れがあるのを回避したかった,ということでしょうか。または,本当はもっとふくらませて(2)の素材だけで大問1題を構成したかったが,さすがに2年連続ほとんど積分計算のない構成までは思い切ることができず,分量調整と計算問題を入れる目的で(1)を追加した,ということでしょうか。
 (2)では導関数のグラフが放物線,という記述が登場します。これまで,関数の増減を扱う際,増減表を通して導関数の符号変化までは扱っていても,「導関数のグラフ」は生徒に無用な混乱を生むのではないかと避けてきた先生方も多かったのではないでしょうか。道のりと速さのように,現実の文脈でも導関数のグラフが意味をもつ場面は考えられるので,今後はこうした課題にも正対する教材を改めて考えたほうがよさそうです。

第4問[選択] 数列(数学B)

 数列の一般項が階差数列の和の形で表せることの逆思考として,与えられた数列の和を「一般項が明らかになっている数列の階差」から求めようとする,いわゆる差分の考えを題材とした数列の問題です。平方数の和,立方数の和はこの差分の方法で導出する教科書も多いと思いますし,(等差)×(等比)の形の数列で差分の考えが有効であることも,すでに体験済の受験生がいておかしくありません。指導者の視点でいえば,普段の授業で「学習の過程の重視」を意識しているかがそのまま問われている問題,とみることもできます。
 最後は,次数を上げて(2次式)×(等比)の形になっても同様にうまくいくことを示すという,数学ⅠAから通算すると何度目かの「探究の2周目は丸投げ」の形ですが,このような「計算こそ2次式で単純なものだが手数が多い」という傾向は,出題の趣旨からしても当分続きそうです。蛇足ながら,探究の2周目だけ急に花子に選手交代するのは,先ほどの第2問の件も含めて考えるとあまりに太郎の扱いが不憫なように感じたのは私だけでしょうか。

第5問[選択] 確率分布と統計的な推測(数学B)

 資格試験の得点分布を題材とした問題のあと,合否をあらためて確率変数にとりなおして二項分布と片側検定を扱う流れになっていました。数学ⅠAの振り返りのときも述べたとおり,モデルの設定については与えられたものに従うしかない,というのが共通テストとしての形式上の制約になるので,そもそも得点分布を正規分布とみなしてよいかどうか,片側検定を用いた判断が適切かどうか,など,この問題の外で考えなければならないことが必然的に多くなる題材です。
 ただ,後半の太郎と花子のやりとりのなかで,「相対度数が同じなら検定結果も同じかな」という太郎の課題設定も,「実際に計算して調べてみよう」という花子の姿勢も,統計に限らず数学の学習一般において的を射たものかと思いますし,「400人中184人」と「100人中46人」で検定から得られる結論が変わる,という数値設定の実例も,授業に活かせる素材として一定の参考にはできそうです。

第6問[選択] ベクトル(数学C)

 三角形 \(\text{ABC}\) において,始点 \(\text{M}\) の位置を固定しないまま関係式 \(\overrightarrow{\text{MP}}=a\overrightarrow{\text{MA}}+b\overrightarrow{\text{MB}}+c\overrightarrow{\text{MC}}\) を与え, \(\text{M}\) と \(\text{P}\) の関係について探究する,とだけ書くと,わりと複雑なテーマ設定に見えますが,実際には小問ごとに具体的な場面を設定することで難易度が調整されています。特に,会話においてためしに \(a=1\),\(b=0\),\(c=0\) という極端な数値設定をおくことで問題を単純化しようとする本問の太郎は,個人的に今年一番いい仕事をしていると思います。本問では司会進行役に徹している花子も,なかなかよどみない誘導ぶりです。
 さて内容ですが,問題全編を通して「斜交座標系における点の位置の扱い」に偏っていて,とくに内積の扱いがほとんどありません。またそれ故か,例年に比べるとだいぶ計算量が少ないのも特徴的です。
 最後の小問(領域を選択肢で選ぶ問題)は,いずれどこかで出したいという問題作成部会の思いもあっただろうとは想像できますが,今年度は第1問に指数・対数関数がなく,かわりの図形と方程式の問題で領域を選択する出題があったので,「あの問題と同じセットに入れて良かったのだろうか」という余計な心配をしてしまいます。

第7問[選択] 平面上の曲線と複素数平面(数学C)

 複素数平面上の原点を中心とする円に対し,\(w=z+\cfrac{1}{z}\)(ジューコフスキー変換)という変換を行ったときの図形を小問(1)(2)で考え,(3)では,さらにその方程式の両辺を2乗しても,(1)(2)を利用すれば変換先の図形がわかる,という流れになっています。
 \((z+\cfrac{1}{z})^2=z^2+\cfrac{1}{z^2}+2\) という計算自体は,実数の範囲であれば数学ⅠAの第1問で扱われてもおかしくないような計算であり,数学ⅠAとⅡBCのセット全体としてここで回収してきたか,という思いもありますが,考えすぎでしょうか。
 また,(2)(ii)では \(r=1\) という特殊な状況における点の軌跡を(選択という形式ではあるものの)図示することが求められ,第6問と第7問を連続で選択した受験生にとっては「特殊な状況をあえて考える」ことが有効な場面が2問続いた,とみることもできます。
 さらに,最後の図の選択問題では「 \(r\) の値にかかわらず,楕円は虚軸と交わる」という条件が決め手になっています。このような内容はマークシート形式ではなかなか問いづらく,意欲的な出題でもあったと思います。「最も適当なものを選べ」という決め台詞が,選択肢に限定を利かせる上でこんなふうに機能する問題が作れるのか,と個人的には驚きました。


 以上,ところどころ脱線もしながら,独断や偏見も織り交ぜた各問の振り返りをまとめました。ⅡBCのほうはⅠA以上に「有名な題材だが私だけが知らなかった」ということなどもありそうですので,そうした知識の抜けや,見方が狭くなっている部分などありましたら忌憚なくお寄せいただき,よりよい教材開発のための知の共有へとつながれば幸いです。

参考資料

令和7年度 大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針(大学入試センター発表)

令和7年度 大学入学共通テスト問題評価・分析委員会報告書(大学入試センター発表)

令和8年度 大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針(大学入試センター発表)

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