茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校
小林 徹也 先生
前回で数学I・A について提案したものに続き,そのようなときの「少しで大きな効果を目指した発問群」を提案したい。
「あと5分」の発問例:「視点を変えて整理する」場合
ここでは,4つの座標平面のうち,最も左の図においては「第\(n\)象限(\(n=1,2,3,4\))」について,それぞれの象限における\(x\)や\(y\)の正負を確認し,また,「第4象限の角」も図示している。さらに,残りの3つの図では,「\(\sin\theta\)の正負」,「\(\cos\theta\)の正負」,「\(\tan\theta\)の正負」それぞれにおいて第\(n\)象限(\(n=1,2,3,4\))における正負を符号\(+-\)を用いて表している。
そこで,見方を逆にして,第\(n\)象限(\(n=1,2,3,4\))それぞれにおいて,「\(\sin\theta\)の正負」,「\(\cos\theta\)の正負」,「\(\tan\theta\)の正負」を整理させてみたい。発問は次のようになる。
【発問0】 サイン,コサイン,タンジェントすべてが正の値となる象限はあるだろうか。
発問群による授業展開・生徒の反応
まず,上のように発問し,1 分程度個別に活動させる。この発問に対し,下記のような図を描き始める生徒がいたら,それを取り上げるとよい。いなければ,ヒントとして教師がその一部を示すとよいだろう。
その後,つぎの発問群を考えさせたい。上の図がイメージできれば次の問題はやさしい。
【発問1】 タンジェントだけが正となる象限はあるだろうか。
加えて,次の発問をする。
【発問2】 すべてが負となる象限はあるだろうか。またその理由を考えよう。
そのような象限がないことは図からわかる。理由として,式\(\tan\theta=\dfrac{\sin\theta}{\cos\theta}\)を利用するアイデアなどが生徒から出るとうれしい。出なければ,ヒントとして与えてよいだろう。
私は10数年前,全国算数・数学研究大会(日本数学教育学会主催)において,次の図「castダイアグラム」を紹介する発表を拝見した。発表では,𝑥 軸 𝑦 軸を書きながら「プラスになるのは」,CASTと書きながら「cast(キャスト)」と言っておられた。その発表者によるとイギリスで使っているという。この図を生徒に見せ,どういう意味があるのか推測させてもいいだろう。
この図では,
第1 象限 では \(\text{All}\)(すべて)\(+\)
第2 象限 では \(\text{Sin}\)のみ\(+\)
第3 象限 では \(\text{Tan}\)のみ\(+\)
第4 象限 では \(\text{Cos}\)のみ\(+\)
であること示している。
発問群の活かし方
発問群により考察の対象の視点を変え,新しい説明を作り出し,さらにそれを用いて考察させる。既習を整理できるだろう。
※後編では,「明確にさせる」場合の発問例についてご紹介します。
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