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2024.07.22

「あと5分」を活かすための発問群の提案(前編)【教育実践report】

茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校
小林 徹也 先生

 授業も終わりに近づくと,「あと5分ある…今の例題に少し違った見方をさせたい…」,あるいは「少し工夫すると違った展開に…」と思うことがある。
 本稿ではそのようなときの「少しで大きな効果を目指した発問群」を提案したい。

「あと5分」の発問例:「〇〇でない」場合

「あと 5 分」を活かすための発問群の提案(前編)【教育実践report】01
▲数学ⅠStandard p.125 例題6

 まず,既習の例題の条件「○○」に対し「○○でない」場合である。この例題では,2次不等式を利用し,縦の長さの範囲を求めさせる。その条件は面積が48cm2「以上」である。
 そこで「以上でない」,すなわち「未満」の場合を求めさせてみる。そのため,下記の発問をする。しかし,はじめからすべてを生徒に書かせると時間がかかりすぎる。そこで,すでにある「以上」の板書等を利用し,「未満」の問題の解説を5分程度終える「発問群」を提案したい。

【発問0】 面積を「48cm2未満」にした場合,解答のどこをどう変えたらよいだろう?

発問群による授業展開・生徒の反応

 まず,上のように発問し,1分程度個別に活動させる。その後,発問群により例題の解答を複数のパートに分け生徒の考えを確認したい。

「あと 5 分」を活かすための発問群の提案(前編)【教育実践report】03
▲数学ⅠStandard p.125 例題6

【発問1】「解の条件(例題 解 1行目〜3行目)はどうなる?」

 生徒は検討するだろうが,まもなくそれは修正の必要がないことがわかるだろう。

【発問2】「2次不等式(例題 解 5行目)はどうなる?」

 面積が48cm2「未満」であることを表す式にしたいのだから,不等号の向きを逆にするだけではなく,等号を削除することを確認したい。
 さらに,生徒は「面積は0より大きい」,すなわち \(0 \lt x(14-x)\) を忘れがちである。もとの解答①で,\(x\),\(14-x\) ともに正としているのでこの解には影響はないが,それを忘れると,「面積が負」となることも認めることになりかねないので注意したい。

【発問3】「2次不等式を解く(例題 解 8行目〜12行目)とどうなる?」

 この際,単に不等号を式だけを見て変えるのではなく,2次関数のグラフを意識して修正させる。

【発問4】「数直線に表してみよう。」

 以前のままでよいところと修正すべきところを丁寧に修正させたい。

発問群の活かし方

 発問群により考察の対象を焦点化し,板書,生徒のノート・教科書を部分的に修正させる。
これにより,少しの時間と手間で異なる問題への対応を経験させることが期待できる。

後編では,「特殊」な場合の発問例についてご紹介します。

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