
円形劇場くらよしフィギュアミュージアム
ゆうなです。ここは鳥取県の倉吉市。この前につづいて、今日も円柱状の建物です。
そう、「福井県こども家族館」を思い出すね。
今日のこちらはフィギュアの博物館、「円形劇場くらよしフィギュアミュージアム」だよ。
フィギュアは好きだな。建物もかっこいい。でもなんだか、なつかしい感じもするな……。
さすがそうたさん、するどい! もともとは、1955年にできた小学校の校舎だったんだ。この建物を設計した建築家の坂本鹿名夫さんが「最も経済的で合理的な建物」だと提唱して、1950年代の半ばに円形建築が大ブームに。わずか数年で、全国に100以上の円形建築が建てられたんだよ。
70年近くも昔の建物なんだね。さっそく中を見に行こうよ。わぁ、真ん中に、りっぱならせん階段。

部屋は、階段を囲む形でぐるりと並んでる。ここが教室だったんだね。カットしたバウムクーヘンみたい。

なるほど、バウムクーヘン! ぴったりだね、ゆうなさん。こんなふうに円を半径で切ってできる図形といえばおうぎ形、ぼくはそれ以外の言い方を思いつかなかったよ。
つまりこの教室は、大きなおうぎ形から、らせん階段の小さなおうぎ形を切り取った形になっているんだね。ところでルーロー、「おうぎ」って?
「おうぎ」は、扇子のことだよ。ほら、広げるとこんな形。

あっ、確かに紙の部分が、ちょうどこの教室と同じ形だね。そしてこの部屋、後ろ全部が窓だから、とっても明るいよ。
そうなんだ! 風がよく通るのも、おうぎ形教室のいいところだよ。
いいところといえば……? そうだ。小学校の教室って1列に並んでいることが多いけど、そのためには細長い土地が必要だよね? 円形校舎なら、もっと小さく建てられそう。
ゆうなさん、いい気づき! これが、この建物の図面だよ。ふつうの四角い教室と比べてみようか。一般的な教室は横7m、縦9mだと考えてみて。

よーし、やってみる! まず、建物の壁の厚みは考えないものとして……四角い教室6つを縦に一直線に並べると \(9\times 6=54\) だから、この場合は54mの長さの土地がいる。ところが、おうぎ形教室を6つ並べたこの円形校舎の直径は、25m。やっぱりコンパクトだね。それに円形校舎なら真ん中に階段が作れるけど、一直線の校舎なら、このほかに階段の分の土地も必要になるよ。

教室の広さはどう? 四角い教室は \(9\times 7=63\) だから、63m2 だね。
この円形校舎では、全体の直径が25mだから半径は12.5m。らせん階段と中央ホール(廊下)を合わせた部分の直径は10.7mと書いてあるから、半径は5.35m。
全体の面積は
\(12.5\times 12.5\times 3.14=490.625\) 490.625m2
らせん階段と中央ホールを合わせた部分の面積は
\(5.35\times 5.35\times 3.14=89.87465\) 89.875m2
つまり、教室1部屋の面積は
\((490.625-89.875)\div 6=66.79\)…
約66.8m2になる。
なんと、ここのおうぎ形教室の方が広いんだ!
そういえばそうたさん、私たち、廊下のことを考えてなかったね。上の図の赤い線のところで比べると、一直線の校舎なら長さは54mだけど、この円形校舎は教室の内側にあるから、直径は10.7m。
\(10.7\times 3.14=33.598\)…
約33.6mだから、\(\dfrac{2}{3}\) くらいの長さですむんだね。
2人とも、バッチリの計算だよ。おうぎ形教室のメリットはほかにもあって、まず四角い教室の長さは9m だけどおうぎ形教室は7.15mだから、先生と子どもの距離が近いよね。それに先生が教室の右を見るときと左を見るときの角度が小さくて、全体を見渡しやすいんだ。

円形校舎、たしかにすごいんだね。あっ、こっちが展示室かな?

そうだった、建物もおもしろかったけど、ここの主役はフィギュアじゃないか。鳥取といえば、「米子鬼太郎空港」と「鳥取砂丘コナン空港」だよ。 『ゲゲゲの鬼太郎』の水木しげる先生や『名探偵コナン』の青山剛昌先生の出身地として、アニメとは切ってもきれない土地なんだ。しかも倉吉市には、世界的にも評価の高いフィギュアメーカーの工場があってね……
えええ? そうたさんって、そんなにアニメにくわしかったの? ぜんぜん知らなかったよ〜。
*円形劇場くらよしフィギュアミュージアム/鳥取県倉吉市。日本最古ともいわれる円形の校舎・旧明倫小学校を改修して2018年にオープンした、フィギュアとキャラクターグッズの博物館。1950年代を象徴する歴史的・文化的価値が認められ、DOCOMOMO JAPANにより「日本におけるモダン・ムーブメントの建築216選」にも選定された。
*写真・図提供/円形劇場くらよしフィギュアミュージアム
*写真撮影・図作成/大野寛武
〒682-0864 鳥取県倉吉市鍛冶町
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