今週の算数・数学フォト

2024.09.02

地上を守る、地下神殿

首都圏外郭放水路

ここは埼玉県春日部市。今日はますりんと、「首都圏外郭放水路」の見学に来ています。あみさんも一緒だよ。100段以上の階段を降りて今、地下に着いたところ。ものすごい大きさだ。ヒンヤリしてる……。

これは、巨大な水槽なんだ。正式な名前は「調圧水槽」。地下神殿とも呼ばれているよ。

大きな柱がいっぱいで、まるで遺跡みたい。どうしてこんなに巨大な施設を作ったんだろう。「水槽」ということは、ここに水をためるのかな。

その通り。そもそも、ここ春日部周辺は利根川・江戸川・荒川に囲まれた平らな土地で、昔から水害が多かったんだ。
だから、川があふれないように、増えた川の水の一部をためて、江戸川に排水する施設が作られたというわけ。完成したのは、2006年の6月だよ。

20年近く前なんだね。うまくいったのかな。

放水路ができる前、1982年の台風18号で48時間に195.5mmの雨が降ったときには、中川・綾瀬川の流域で29457戸の浸水被害があったんだ。ところが2019年の台風19号では、48時間に降った雨の量は216.4mmと多かったのに、浸水した家は2737戸。被害を \(\dfrac{1}{10}\) 以下に抑えることができたんだよ。

そうなんだね。ええと、ここでもう一度、水路全体の仕組みを見てみたいな。いくつもの川から、水を集めるんだよね。

この流域を流れる川は、5つあるんだ。それらの川で一定の水位を超えると水が流れ込むのが「立坑(たてこう)」で、これは一番遠くにある第5立坑から第2立坑まで4つある。水は第1立坑を通ってこの調圧水槽にたまり、最後はポンプで江戸川に排出されるんだよ。

地上を守る、地下神殿02

あれ? イラストを見ると、ほとんど直方体と円柱でできてるみたい。川や湖の水の量ってなかなか見当がつかないけど、これなら計算しやすそうだよ。ますりん、この調圧水槽は直方体、立坑は円柱と考えていいと思う?

いいよ、あみさん。トンネルも、ほぼ円柱と考えて大丈夫。立坑の太さは直径30mで高さは70m 、トンネルの太さは直径10mで長さは6.3kmだ。調圧水槽については、柱もたくさんあるから正確ではないけれど、いったん \(177\text{m}\times 78\text{m}\times 18\text{m}\) の直方体として計算してみて!

5本の立坑の半径を15m、トンネルの半径を5mとして計算していくよ。まず式を立てると
\(\!\quad 15\times 15\times 3.14\times 70\times 5\)
\(+5\times 5\times 3.14\times 6300\)
\(+177\times 78\times 18\)
だね。計算が大変そう!

立坑とトンネルの体積を求めるには、どちらにも3.14をかけるから
\(\quad 15\!\times\! 15\!\times\! {\color{red}{3.14}} \!\times \!70\!\times\! 5\)
\(+5 \times 5 \times {\color{red}{3.14}}\times 6300\)
の部分は
\(\quad (15\times 15\times 70\times 5\)
\(+5\times 5\times 6300)\times {\color{red}{3.14}}\)
とすることができるよ。

なるほど、ますりん、サンキュー! そうすると
\(\ \! (78750\!+\!157500)\!\times\! 3.14\!+\!248508\)
\(=236250\times 3.14+248508\)
\(=741825+248508\)
\(=990333\)
約99万m3だ。すごい!

あみさん、計算はバッチリだよ。でも実際にはいっぱいまで水をためることはなくて、容量は67万m3なんだって。

*首都圏外郭放水路/埼玉県春日部市。洪水を防ぐために作られた、世界最大級の地下放水路。ためた水を江戸川に流す「排水機場」に設置された4台の巨大ポンプをフル稼働させると1秒間に200m3、小学校の25mプール約1杯分の水を排出することができる。

*写真提供/国土交通省江戸川河川事務所

〒344-0111 埼玉県春日部市上金崎

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