今週の算数・数学フォト

2024.06.10

水の流れで、時を計る

近江神宮

今日は、ひろとさんと一緒に滋賀県の近江神宮にやってきたよ。

百人一首かるたで有名な神社だ。ニュースで見たことがある。「天智天皇をまつる神社」だったのか。

天智天皇が詠んだ「秋の田のかりほの庵の苫をあらみ わが衣手は露にぬれつつ」は百人一首のスタート、第1番の歌だからね。でも、それだけじゃないよ。日本で最初の時計を作ったことでも有名なんだ。天智天皇は西暦668年に大津で即位、671年の4月25日に「漏刻」で時を計り始めたと、『日本書紀』に書かれている。この日を太陽暦に直した6月10日が、「時の記念日」になったというわけ。

あれ? 「漏刻」って、どこかで聞いたことがある。そうだ、ルーローと一緒に行った沖縄じゃないか。首里城に、「漏刻門」という名前の門があったよ。

よく思い出したね、その通り。ここの境内には、まさにその漏刻が復元されているんだ。よーし! さっそく見にいこう。

【今週の算数・数学フォト】水の流れで、時を計る02

上の箱から下の箱へ、順に水を流しているのかな。箱は上から1、2、……3つあって、一番下の箱へ。真ん中に立っているのは、矢?

ただ立っているわけじゃなくて、下の箱の水に浮かべてあるんだ。水が流れ込んで水位が上がれば 矢も一緒に上がるから、その上がり方で時刻がわかるという仕組み。これが、水時計だよ。

どうして、箱をいくつも重ねるんだろう。もっとシンプルに、目盛りをつけた桶に水を入れて少しずつ流すだけでも、時間が計れそうだけど。

いいところに気づいたね! 古い漏刻には、そういうタイプのものもあったみたいだよ。中国の前漢の時代(紀元前206〜紀元後8年)の漏刻は筒型のつぼで、底の近くに管をつけてそこから水を流していたんだ。
だけど、ひろとさん、ちょっと想像してみて。水がたっぷり入っているときと、少なくなってきたとき、管から出る水の勢いは同じかな?

あれ? そういえば、水がたくさん入っているときの方が、勢いよく出そう。これ、ペットボトルで実験できるんじゃないかな。

おおっ、いいね。実際にやってみるのは大事だ。さすが、ひろとさん。

えへへ。プチ漏刻作りだね。こうやって、ペットボトルの底の方に穴をあけて……ものさしを貼り付けて、と。1分ごとに、水位を測っていこう。

【今週の算数・数学フォト】水の流れで、時を計る03

実験スタートだ。よーし、水が出てきた! 放物線の形だね。

時間と水位を測っていくよ。1分……2分……水が減って、水位が下がっていく。5分……6分……あれ。水の勢いが、弱くなってきたかも。

【今週の算数・数学フォト】水の流れで、時を計る04
(水位が高いとき)
【今週の算数・数学フォト】水の流れで、時を計る05
(水位が中間のとき)
【今週の算数・数学フォト】水の流れで、時を計る06
(水位が低くなったとき)

これは確かに、時計として使うには誤差が大きいな。ああ、止まっちゃった。水を流し始めてから経った時間と水位を、グラフにしてみるね……あっ、これも放物線みたい。

【今週の算数・数学フォト】水の流れで、時を計る07
【今週の算数・数学フォト】水の流れで、時を計る08

いやぁ、ひろとさん。実験からグラフ作りまで、しっかりやったね。本当にすごいよ。そして、この誤差を出さないために改良してできたのが、水槽をいくつも重ねた形の漏刻だったんだ。国立民族学博物館によるシミュレーションの結果も見てみよう。
箱は、左の図のように並べた。近江神宮の漏刻と、同じ仕組みだよ。4つの受水槽の水位の変化を表したのが、右のグラフだ。上段の水位がギザギザなのは、4時間ごとに水を足しているから。

【今週の算数・数学フォト】水の流れで、時を計る11

奈良国立文化財研究所飛鳥資料館 [編] 飛鳥資料館 図録 第11冊『飛鳥の水時計』より

中段は、まだほんの少し水位の変化があるけど……下段になると、ほぼ一定。なるほど。だから、受水槽の水位がきれいな比例のグラフになるのか! これなら、正確に時刻が計れるね。

*近江神宮/滋賀県大津市。天智天皇が大津に都を置いたことをもとに、1940年に創祀された。天智天皇が作った日本初の水時計にちなみ、境内には復元された漏刻や日時計などがある。競技かるたの「名人位・クイーン位決定戦」、「全国高等学校選手権大会」などが開かれることでも有名。

*写真提供/近江神宮

〒520-0015 滋賀県大津市神宮町

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