算数・数学フォト

2023.11.13

2つのへそがある公園

日本へそ公園

*にしわき経緯度地球科学館「テラ・ドーム」

そうたです。ここは兵庫県西脇市の、「日本へそ公園」。へそ? お腹の真ん中にある、おへそかな?

その通り。しかも「日本」のへそ、というところがポイントだね。日本の真ん中について考えるんだから、端っこを確認しておこうかな。一般人が入れない土地もあるから、ぼくたちが実際に旅行で行ける端っこは…
東は北海道の納沙布岬(のさっぷみさき)、およそ東経145°
西は沖縄県の与那国島(よなぐにじま)、およそ東経123°
南は沖縄県の波照間島(はてるまじま)、およそ北緯24°
北は北海道の宗谷岬(そうやみさき)、およそ北緯46°
そうたさん、どう?

東西と南北、それぞれの真ん中ということ? そういえばルーロー、日本の標準時は東経135°の子午線が基準だって聞いたことがあるよ。納沙布岬(東経145°)と与那国島(東経123°)の、ほぼ真ん中くらいだね。

そうたさん、さすが、よく知っているね! じゃあ、南北の真ん中は?

北緯24°と46°の真ん中だから、ちょうど北緯35°かな?

その通り。実はその東経135°と北緯35°の交わる点が、この公園の中にあるんだ。よーし! さっそく見に行くよ。

【今週の算数・数学フォト】2つのへそがある公園02

*「日本のへそ」大正のモニュメント

うん。ちゃんと「日本のへそ」って書いてある。看板の奥にある細い柱が、「東経135°北緯35°」の印なんだね。

1923年(大正12年)に、陸軍参謀本部の陸地測量部が調べたんだって。ちょうど100年前だ。でもね、実はこの公園には、もう1つの「へそ」があるんだ……ここから437.6m離れた場所にあるから、少し歩くよ……さあ、ここだ。

【今週の算数・数学フォト】2つのへそがある公園03

*「日本のへそ」平成のモニュメント

へえぇ。こっちは、スッキリした柱が4本だ。 かっこいいな!

この4本の柱がつくる正方形の中心、つまり向かい合う頂点を結んだ十字の交点が、「へそ」になっているんだ。守護神の槍をイメージしたデザインなんだって。フランスのパトリック・ベルジェ氏が設計したモニュメントだよ。

それにしても、へそが2つもあるのはどういうこと? 東経135°で北緯35°なんだから、同じ1点のはずじゃないか。

そこはね、測量法の違いなんだ。大正時代の測量は、「三角測量」。位置がハッキリしている「三角点」2つを元にして、場所を求めるやり方だよ。

【今週の算数・数学フォト】2つのへそがある公園04

三角点AとBからCの位置を求めたいときには、こういう三角形を考える。辺ABの長さと\(\angle\)a、\(\angle\)bの大きさがわかれば、頂点Cを定めることができるからね。

あっ、三角形の合同条件に似た考え方だ! 「1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい」三角形は、合同だよね。だから、1つの辺とその両端の角度がわかれば、頂点Cが決められるんだ。

すごいよ、そうたさん。その通りだ。ところがその後、人工衛星の電波を使うGPS技術がどんどん発達して、三角測量で計算した位置とはズレがあるとわかってきた。そこで1990年(平成2年)、新たにGPS測量した「東経135°と北緯35°の交点」を、もう1つの「へそ」としたんだ。

この公園の中にある2つのへそで、測量の歴史までわかるんだね。

それぞれ「大正のへそ」、「平成のへそ」と呼ばれているよ。100年も昔の測量結果が、GPS測量とたった437.6mしか違わないところも、驚きだね!

*日本へそ公園/兵庫県西脇市。ジャンボすべり台などを備えた遊び場や広場のほか、美術家・横尾忠則氏ゆかりの西脇市岡之山美術館、にしわき経緯度地球科学館(テラ・ドーム)などがある。

〒677-0039 兵庫県西脇市上比延町

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