今週の算数・数学フォト

2023.05.15

数学の神様に感謝!

熊野神社

ひろとです。今日はルーローと、兵庫県西宮市の「熊野神社」にやってきたよ。ここは「甲子園熊野神社」とも呼ばれているんだって。……あれ?境内に、小さな神社を見つけたよ。名前は「算学神社」だって。もしかして、数学に関係のある神社なのかな。

おっ、いいところに気づいたね。ほら、そこにも、ちょっと気になる石碑があるよ。

あっ。両わきの模様が、そろばんの珠みたい。文字の方は……「碑彰顕算和」? よくわからないけど、やっぱり算数と関係がありそうだね。

【今週の算数・数学フォト】数学の神様に感謝!02

ユニークなデザインだね。名前の読み方だけ、ちょっと惜しかった。右から読んでみて? 「和算顕彰碑(わさんけんしょうひ)」と読むんだよ。「和算」というのは、江戸時代に、日本で独自に発達した数学のことなんだ。

あっ。江戸時代といえば、鎖国の時代!

そうそう。そして和算といえば、有名なのは「塵劫記(じんこうき)」だね。日常生活に関係する算数や数学をまとめた大ベストセラーだけど、これを書いた吉田光由(よしだみつよし)のお師匠さんだった毛利重能(もうりしげよし)を祀っているのが、この神社なんだ。毛利重能は、ここ西宮市の出身だったからだね。

石碑の台座に書いてある図も、気になるな。図形の問題みたい。

【今週の算数・数学フォト】数学の神様に感謝!03

この神社に奉納された「算額」に書いてあった問題と、その答えなんだ。「算額」というのは、難しい数学の問題が解けたことを神仏に感謝して神社やお寺に奉納した、大きな額のことだよ。全国に800以上も残っているんだって。例えば、こんな問題があるよ。ひろとさんも、考えてみる?
「この図は、大きな円の中に、その円の半径を直径とする円が2つぴったりと入っているものである。赤い部分の面積と黄色い部分の面積では、どちらが大きいか。」

【今週の算数・数学フォト】数学の神様に感謝!04

うーん、そうだなぁ。相似比を使ったらどうだろう?
大きい円と小さい円は、もちろん相似だ。小さい円の半径は、大きい円の半径の\(\dfrac{1}{2}\)。つまり、大きい円と小さい円の相似比は1:\(\dfrac{1}{2}\)になる。
面積比は相似比の2乗だから、1:\(\dfrac{1}{4}\)だね。
黄色い部分の面積は、小さい円の2つ分だから、大きい円と黄色い部分の面積比は、1:\(\dfrac{1}{2}\)。
赤い部分の面積は大きい円の面積から黄色い部分の面積を引いたものだから、大きい円の面積の\(\dfrac{1}{2}\) 。
ということは、赤い部分と黄色い部分の面積は、等しいよ!

やるね、ひろとさん!

別の方法も、思いついちゃった。今度は、文字を使うよ。
大きい円Oの半径をrとすると、小さい円P、円Qの半径はそれぞれ\(\dfrac{r}{2}\)。だから、円Oの面積は\(\pi r^2\)。円Pと円Qの面積はどちらも\(\dfrac{\pi}{4}r^2\)だから、黄色い部分の面積は\(\dfrac{\pi}{2}r^2\)
ということは、赤い部分の面積は\(\pi r^2−\dfrac{\pi}{2}r^2\)で、\(\dfrac{\pi}{2}r^2\)となる。うん。やっぱり2つの面積は等しいね!

【今週の算数・数学フォト】数学の神様に感謝!05

すごいじゃないか、ひろとさん!

今日はたまたま、すぐに答えがわかったけどさ。例えば、もっとずっと難しくて長く考え続けた問題が解けたとしたら、神様に感謝したくなったり、解法を大きく書いてみんなに見せたくなったりする気持ちは、すごくよくわかるよ。江戸時代の人たちも、やっぱり同じだったんだね。

*熊野神社/兵庫県西宮市。1972年、境内にそろばんの祖とされる毛利重能の碑が建立され、翌1973年に算学神社ができた。日本で唯一の、数学の神社。

〒663-8103 兵庫県西宮市熊野町

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