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中学校

2023.02.23

【ICT教育のイマ】授業の振り返りをスタディ・ログとして活用する

群馬県 公立中学校 教諭

 生徒が学んだ数学を統合・発展させながら深い学びを実現するためには、学んだことを振り返りながら身に付けた知識を整理し、それらを活用して新たな問題解決につなげていくことが必要です。そのような学びを実現するために、本校ではICTを活用して、日々の授業の振り返りをスタディ・ログとして蓄積し、必要に応じてそれらを生かせるような工夫を行っています。今回は、その事例を紹介したいと思います。

単元ごとにデジタルで振り返りシートを作成

 本校で使用している振り返りシートは、一つの単元につき1枚となっており、「ロイロノート・スクール」を使ってデジタルで作成しています。振り返りシートには、小単元ごとの課題と振り返り、また単元全体の課題と振り返りを記入できるようにしてあります(図1)。振り返る項目は、その小単元を通して「分かったこと・気づいたこと」「さらに知りたいこと・疑問に思ったこと」「使った考え方」の3点です。特に、「使った考え方」を記録として残しておくことで、生徒たちが課題解決の際に働かせた見方や考え方を自覚することができるようになります。また、別の単元や領域でも同じような考え方を使える場面があるということが視覚的に意識できるようになり、数学の世界の広がりを実感することにもつながります。

【ICT教育のイマ】授業の振り返りをスタディ・ログとして活用する01
【ICT教育のイマ】授業の振り返りをスタディ・ログとして活用する02

<図1>

振り返りシートは領域ごとに保存

 これらの振り返りシートは、日々の授業ノートと合わせて「A数と式」「B図形」「C関数」「Dデータの活用」の領域ごとにまとめてクラウド上に保存しています(図2)。振り返りシートを領域ごとに保存することにより、系統性を意識して、必要に応じて過去の振り返りを活用しながら、学習を進めることができるようになります。

 例えば、2次方程式の学習にあたり、これまでの方程式の学習を振り返り、以前使った考え方が使えないかを考えたり、1次方程式との共通点や相違点を考えたりすることで、方程式に対する見方や考え方が豊かになり、さらに理解が深まっていくことが期待できます。

 また、全体を見通す中で、例えば、1年生のときに解決できなかった疑問が、3年生の学習を行う中で解決したり、これまでに身に付けた知識や技能が、今まで考えていた範囲よりも広い範囲で適用できることに気付いたりするといった経験を通して、自らの成長を実感することができるようになります。

【ICT教育のイマ】授業の振り返りをスタディ・ログとして活用する03
【ICT教育のイマ】授業の振り返りをスタディ・ログとして活用する04

<図2>

 本校でも、以前は紙の振り返りシートを利用していました。しかし、紙での振り返りでは、必要なときにすぐ以前のシートを参照することができず、授業内で活用するのは難しい状況がありました。

 デジタルデータで保存するようにしてからは、生徒が自分の好きなように順番を並び替えたり、関連する内容を結び付けたりして、整理することが容易にできるため、授業内での活用の頻度が増えました。また、必要な情報をキーワードで瞬時に検索することができるため、それまで気付かなかった部分のつながりを発見することもできるようになり、学びの幅が広がったようにも感じます。

 もし、現在日々の振り返りを紙に書いている場合でも、それらを撮影することでデジタルデータとして保存することが可能です。そのような方法でも、スタディ・ログとしての役割を十分に果たせると思います。

 せっかく時間をかけて書いた振り返りも、次につなげることができなければあまり意味のないものになってしまいます。そんな振り返りを最大限学びに生かしていくために、ICTを活用することは大変有効であると考えます。ぜひお試しいただければと思います。

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