特集記事(小中学校)

中学校

2023.01.20

【ICT教育のイマ】数学科の授業におけるICTの活用(デジタルとアナログの融合)

前橋市立第七中学校
松田圭史先生

 GIGAスクール構想によって、生徒に1人1台端末環境が整備され始めました。それに伴い、日々の授業実践や構想の変化を感じています。課題提示や板書の場面では、ICTの活用により、課題を視覚的に提示する場面が増えたり、板書内容がICTの画面に置き変わったり等、視覚的に捉え易い場面が増えているように感じています。しかし、授業のねらいや目標を達成するための手段としてICTの活用場面を考える必要があり、ICTの活用が目的ではないと感じています。本稿が、数学の授業における効果的なICTの活用場面について、考えるきっかけになれば幸いです。

 まずデジタルの特徴を紹介します。数学の授業においてICTを活用する良さは次の3点だと考えています。

  • 視覚的な課題提示で解決への見通しをもたせ易くなる。
  • 短時間で数学的な思考の共有や知識・理解の定着に繋げることを通して、授業のねらいや目標を達成すること。
  • 数学的な思考を深める場面が設定し易くなること。

 ICTを活用する場面が多い領域として、「B 図形領域」や「D データの活用領域」が考えられます。「B 図形領域」の学習では、課題の図形を編集して自分の考えを短時間で共有して考察し合う活動が考えられます。また、「D データの活用領域」の学習では、複数のデータを表やグラフに整理して、データの分布の傾向を読み取り、批判的に考察し、判断する活動が考えられるなど、2つの領域でICTの活用場面が多くあります。

 具体的なICT活用場面として、「①数学的な思考の共有」、「②作図等の師範」、「③振り返り」等が考えられます。

「①数学的な思考」の共有では、自分の考えを書き込んだノートの写真や画像を共有します。ICTを活用することで、複数の生徒の考えを短時間で共有できます。また、自分の考えに自信を持てていない状態であっても、タブレットで画像を操作することにより、課題解決への糸口が見つかったり、共有した画像をもとに思考が進むきっかけになったりすることが期待できます。さらに、共有したノートや図をほかの生徒が説明する活動などを通して、数学的な思考力を高める活動が考えられます。

「②作図等の師範」では、師範のコンテンツや動画の必要な部分を繰り返して確認することで、効率的に作図への知識・理解を深められ、個別支援の充実に繋げることができます。

「③振り返り」では、授業での学びの記録をスプレッドシートなどのデータとして蓄積していき、学びを単元や領域を通して振り返ることで、自己調整力の向上や次の学習への意欲に繋げることができます。

 一方アナログでの活動として、与えられた条件や課題から予想を立て、想像を働かせながら課題解決の見通しをもち、数学的に表現することで、課題解決を図ります。また、解決過程を振り返ることで、授業で学んだ内容と既習の内容のつながりについて考えたりすることができます。

 学習内容に応じてデジタルとアナログを融合させた課題提示や板書を工夫することによって、授業のねらいや目標を達成できるとよいと思います。「何をどのように学ばせるか」という視点でデジタルとアナログのバランスを考え、授業構想や単元構想をまとめていきましょう。

【授業実践例】

 以下ではデジタルとアナログを融合した授業実践例を紹介します。

 中学校数学1年生5章1節「図形の移動」の学習において、「麻の葉」模様を、「どの図形をもとにして、どのように動かしたか(敷き詰めているか)」について考える課題を設定しました。

生徒の思考を促す手立てとして、「麻の葉」の画像を生徒用のタブレットに送信し、移動するもとの図形を線で囲ませ、それぞれどのように敷き詰めたか、生徒の考えを画面で共有しました。

【ICTを活用して課題に取り組んでいる生徒の様子】

【ICT教育のイマ】数学科の授業におけるICTの活用(デジタルとアナログの融合)07

図1の生徒は、まずピンクの二等辺三角形を反時計周りに60°ずつ回転させて敷き詰め、次に黄色の二等辺三角形を、時計回りに60°ずつ回転させて敷き詰めた図形と考えました。

一方で図2の生徒は、立方体の見取り図風な図形(「四角」)を敷き詰めた図形と考えました。

図1

【ICT教育のイマ】数学科の授業におけるICTの活用(デジタルとアナログの融合)02

図2

【ICT教育のイマ】数学科の授業におけるICTの活用(デジタルとアナログの融合)03

課題を生徒に作業させている間は図3のように、生徒の進捗の様子を教員がリアルタイムで確認し、必要に応じて、机間支援をしています。

生徒用のタブレットで情報を共有する際の注意点として、画面が切り替わると生徒の記憶に残りにくいため、授業のねらいに迫る考えや知識等については、板書し、生徒の理解が深まるようにしています。

図3

【ICT教育のイマ】数学科の授業におけるICTの活用(デジタルとアナログの融合)04

また、学習後の振り返りの場面では、「Google Classroom」の課題機能、授業での学びをスプレッドシートに記録し教員、生徒間で記録のやり取りを通して、学習を振り返り、生徒の学習を調整することに繋げていきます(図4)。

図4

【ICT教育のイマ】数学科の授業におけるICTの活用(デジタルとアナログの融合)05

【板書】

【ICT教育のイマ】数学科の授業におけるICTの活用(デジタルとアナログの融合)08

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