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横浜国立大学教育学部附属横浜中学校
教諭 八神純一先生
本校では、Microsoft Office365が採用されており、学習支援ソフトとしては、Microsoft Teamsが活用されている。Microsoft Teamsでは、各学級のチームの中に教科ごとのチャネルが作成されている。私が活用している「数学チャネル」では、時間や場所の制約を超えて生徒同士、生徒と私の数学談義が活発に行われている。
私は「生徒による授業評価」「学習履歴」「生徒や教師の対話」の場としてMicrosoft Teamsの「数学チャネル」を活用している。その具体を紹介しよう。
授業評価の場
最初に「生徒による授業評価」の場としての活用法である。
これは、授業毎に私が投稿する「授業スレッド」に、生徒自身が授業内容の理解度に応じてスタンプを押して反応する、というものである。授業者である私は、スタンプの反応数や反応速度、またスタンプを押す際の生徒の表情を見とり、「授業評価」として活用している。
具体的な手順は次の通りである。
授業者である私が「授業内容」を簡単に紹介した文書を「数学チャネル」に「新しい投稿」としてアップする。これを「授業スレッド」と呼んでいる。授業終了直前に、生徒に声をかけ、授業内容を理解できたかどうかを「サムズアップ」のスタンプを押すことで意思表示をするように促す。これを授業毎に行う。
「スタンプ」を押す操作は生徒にとっても容易く、大した時間も要しない。押されたスタンプの数や反応速度から全体的な理解度を見とることができる上、スタンプを押す際の生徒の表情に悩んでいる様子が伺えれば、直後の休み時間に声をかけることもできる。
学習履歴の場
次に「学習履歴の場」としての活用法である。
先述の「授業スレッド」には授業日と授業内容が簡単に記されている。これに加えて、「返信」機能を用いて板書記録や生徒が話し合いで使ったホワイトボードの記録写真等もアップする。このようにすることで、その授業を欠席した生徒も自宅等で授業内容を確認することができる。
また、Microsoft Teamsにある「投稿内容についての検索」機能を用いれば、関連する既習事項を容易に振り返ることができる。例えば「カッコのある1次方程式」について学習する際、「分配法則」と検索すれば、過去の単元において学習したことを履歴として瞬時に見ることができるのだ。生徒自身が既習事項を振り返り、問題解決に役立てたり、自らの成長を自覚したりすることができると考えている。
対話の場
最後に、時間や場所の制約を超えた「対話の場」としての活用法である。
私は、この「対話の場」としての活用に特に大きな可能性を感じている。50分という限られた授業時間では、発展的な思考や補充的な学習内容を取り上げたくても時間の確保が難しいと感じることはないだろうか。インターネットの世界を活用すれば、時間や場所の制約を超えて、生徒の主体的な学びを継続させることができると考える。
先述の「授業スレッド」に対する「返信」機能には、生徒の入力も許可している。ここでは授業内容について発言したい生徒が自由に自分の考えを入力することができる。生徒は、自ら調べたり考えたりして作成した「レポート」をアップしたり、授業内容に関しての疑問を発言したりしている。また、仲間のレポートや発言に反応し、より深く調べたり、新たな課題を提示したりする生徒の姿も見られる。
以下に、具体的な事例として、生徒同士のやり取りの一部を紹介しよう。このやり取りは、帰宅した生徒たちが各家庭から「数学チャネル」にアクセスしたものである。
5月に行った「累乗のある式を正しく計算させる授業」に関して、ある生徒が「指数が小数になるとどうなるのか?」と発言した。この疑問を解決しようと複数の生徒が、それぞれ調べたり考えたりし始めた。ある生徒は「小数を分数に直す」ことを提案し、別の生徒は、指数が自然数の場合を例に、指数関数を見出そうとした。解決途中の発言に対して、また別の生徒が質問をするなど、生徒たちの会話は深まり、最終的には、中学3年生の学習内容である「平方根」や高校の学習内容である「指数関数」にまで話題が及んだ。生徒たちにとって、未習であるはずの内容についても、お互いの会話の中で学び合っている様子であった。
勿論、学級全員がこの会話の内容を理解できているわけではないと考えられるので、私は次の授業の開始時に少しだけこの話に触れ、「今は理解しきれなくても大丈夫である」と全体に伝えて、次の授業内容である除法の学習を進めた。
これは、一人一台のICT環境を活用することで、授業終了時に聞かれる「もっと考え続けたい!」という生徒の願いを具現化できた一例である。
このようにTeamsの機能を活用すれば、時間や場所、道具といった物理的な障壁を乗り越えることができる。
しかし、これらの機能について私も最初から知っていたわけではない。活用しながら気が付いたり、知ったりしたことばかりである。まずは活用してみることが大切なのではないか、と思う。
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