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中学校

2021.10.20

【ICT教育のイマ】デジタル教科書(指導者用・学習者用)活用方法の紹介

北海道教育大学附属函館中学校
 数学科 有金大輔先生

【ICT教育のイマ】デジタル教科書(指導者用・学習者用)活用方法の紹介01

Ⅰ デジタル教科書を活用した授業づくりのポイント

 ICT教育と聞くと、どうしても「デジタルvs アナログ」を考える先生方が多いのが現状ではないでしょうか。ICT教育は今までと大きく変わった授業をするわけではありません。あくまでも現在行っている授業を基に、ICTを活用することで子どもたちの興味関心を高めたり、授業時間の短縮につなげたり、視覚的や動的に表現したりなどのちょっとした工夫を考えればよいのです。つまり、「アナログ+デジタル=ICT教育」と考えた授業づくりが必要になります。デジタル教科書をどの場面で活用しようかと授業を組み立てるのではなく、現在の授業で「この場面でデジタル教科書を使えば、時間が短縮され、子供たちの思考の時間が増えるのではないか」などの視点で授業を組み立てるのです。今の授業+α(ICTの活用)を心がけて授業づくりを行えば負担も少なく、さらに効果的な活用につながります。
 今回はこの+αを視点として、指導者用デジタル教科書、学習者用デジタル教科書と2つに分けて実践事例を紹介いたします。

Ⅱ 指導者用デジタル教科書の実践事例

① 問題提示での活用

 算数・数学において導入の場面で問題提示を行うことが基本です。問題をデジタル教科書で提示することで、時間を短縮することが可能となります。とくに難しい問題や応用の問題など文章が長いときには効果的です。書く時間を減らすことで、状況を見とる時間や子供たちの思考の時間増加につながります。またデジタル教科書は動的コンテンツもあり、問題の把握にも効果的です。(図1)

【ICT教育のイマ】デジタル教科書(指導者用・学習者用)活用方法の紹介_図01
<図1>

さらに数値を変える機能もあり、同じ内容で違う数値の問題に取り組むことも可能となります。(図2)

【ICT教育のイマ】デジタル教科書(指導者用・学習者用)活用方法の紹介_図2
<図2>

② 解答や解説での活用

 算数や数学の授業では、練習問題に取り組むと必ず解答や解説の時間があります。この解答や解説の時間もデジタル教科書を活用することで、時間短縮につなげることが可能となります。子どもたちが問題を解いている時間を利用して問題を板書していませんか。デジタル教科書を活用すれば、問題を板書している時間は子どもたちの考えを見とる時間や教える時間に変わります。何気ない時間だとは思いますが、この時間を有効活用して見とることができればその後の授業の流れも良くなります。また子どもたちの思考の時間増加にもつながります。解答もデジタル教科書を活用することでスムーズに行うこともでき、ステップ表示もあるため子どもたちの状況に合わせた解答もできます。(図3)

【ICT教育のイマ】デジタル教科書(指導者用・学習者用)活用方法の紹介_図3
<図3>

とくに図形分野など図が必要な場面では、丁寧に分かりやすく動的な説明なども可能です。(図4)

【ICT教育のイマ】デジタル教科書(指導者用・学習者用)活用方法の紹介_図4
<図4>

 指導者用のデジタル教科書を活用した授業づくりのポイントの1つは、時間短縮だと考えています。現在の授業の中で、または授業の準備の場面で短縮できることはありませんか。デジタル教科書は特別な時間に使うのではなく、日々の授業で短縮できる場面や授業準備で活用することを考えてみてはどうでしょうか。時間を短縮することで子どもたちと向き合う時間や、子どもたちが思考する時間を多く設定することが可能となり、より深い学びへとつなげることができるようになります。

Ⅲ 学習者用デジタル教科書の実践事例

① 操作的・動的なコンテンツなどでの活用

 学習者用デジタル教科書には、操作的・動的なコンテンツが多くあります。例えば関数分野でのグラフや、図形分野(図5)などです。これらは子どもたち自身が操作するので、理解するまで操作も可能ですし、端末の持ち帰りが可能であれば家での復習時などでも活用が可能となります。これらはⅡで紹介した指導者用デジタル教科書の実践事例と併用して活用することでより効果を発揮します。

【ICT教育のイマ】デジタル教科書(指導者用・学習者用)活用方法の紹介_図5グラフでの活用
【ICT教育のイマ】デジタル教科書(指導者用・学習者用)活用方法の紹介_図5図形での活用

<図5>

② 共有場面での活用

  学習者用デジタル教科書は、ペン機能など用いることでデジタル教科書に直接書き込むことができます。ノートに書きこむとそれらをクラス全体に共有することは、時間がかかりますが、1人1台端末環境下では端末の画面を教師側の画面に映し出すことで簡単に共有を図ることができます。また他者の内容を端末のキャプチャー機能を用いることで簡単に保存することも可能なため、これも端末持ち帰りが可能であれば、家庭での学習にも役立てることができます。
 学習者用デジタル教科書を活用した授業は、1人1台端末環境下(とくに端末持ち帰りが可能)でもっとも教育効果を発揮します。学習者用デジタル教科書を活用することで主体的・対話的で深い学びへの授業転換ができるようになると考えます。先生が見せて終わりにはならない主体的で深い学びが可能となります。また保存などの工夫することで家庭での復習もでき、シームレスな学びへとつながります。

Ⅳ まとめ

 デジタル教科書を活用するだけで学びが深まるわけではありません。先生たちが現在行っている授業で十分に学びを深めることは可能だと思います。その授業がデジタル教科書を活用し工夫することで、子どもたちの考えを見とる時間や思考の時間が増加します。今まで手間となっていた時間を軽減することが可能となり、動的コンテンツなど活用することで理解を早めたり深い学びへと導くこともできます。
 まずは指導者用デジタル教科書が活用しやすいと思います。たまに使うではなく、毎日使うことで、機器の扱いや接続なども短縮することが可能となり、よりよい実践につながると考えています。

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