神奈川県立横浜旭陵高等学校
持丸 裕一 先生
「別解を考える」ことは,数学を学ぶ楽しさの一つです。それは授業の場面でも同じです。問題演習中に生徒が思いがけない解法を示すことがあります。こうした解法を共有することで,他者の考え方に触れ,自分の思考を広げることができます。そのような授業は,単に例題を真似して解くだけの授業よりも,はるかに楽しいものとなるでしょう。
また,こちらから「別の解き方はないか?」と問いかけることもあります。別解を考えることによって,見過ごしていた重要な点に気づき,学習内容への理解をより深めることができるからです。
また,こちらから「別の解き方はないか?」と問いかけることもあります。別解を考えることによって,見過ごしていた重要な点に気づき,学習内容への理解をより深めることができるからです。
因数分解の例です。高校数学の最初の単元である「数と式」では,計算力をつけることはもちろん大切ですが,式の見方も豊かにしてあげたいものです。
本問のねらいは,「2種類以上の文字を含むときは,最も次数の低い文字について整理するとよい」ことに気づかせることです。
そこで,教科書にある \(x\) について整理した解答を解説したあとに,短い時間でねらいの達成につながる次のような発問をします。
【発問】
例15について,\(y\) について整理しても因数分解できるだろうか。考えてみよう。
例15について,\(y\) について整理しても因数分解できるだろうか。考えてみよう。
T-1 :例15のように,1次の文字 \(x\) について整理すると,〇\(x+\)△の形となって,あとは〇と△で共通項を見つけ出せばよいだけです。この場合は,すぐに \((y-3)\) という因数が見つかりました。
T-2 :2次の文字 \(y\) について整理するとどうでしょう。今度は,〇\(y^2+\)△\(y+\)□の形となって,少々試行錯誤が必要です。
T-3 : この場合は,\(y^2\) の係数が \(1\) であり,定数項が \(-3\) と \((2x+3)\) の積で,\(y\) の係数がそれらの和になっているので,公式を使って因数分解することができました。
もし,3次の文字があったらもっと大変なことは予想できますね。
以上のことから,2種類以上の文字を含むときは,どの文字に着目するとよいか説明できますか?
T-2 :2次の文字 \(y\) について整理するとどうでしょう。今度は,〇\(y^2+\)△\(y+\)□の形となって,少々試行錯誤が必要です。
T-3 : この場合は,\(y^2\) の係数が \(1\) であり,定数項が \(-3\) と \((2x+3)\) の積で,\(y\) の係数がそれらの和になっているので,公式を使って因数分解することができました。
もし,3次の文字があったらもっと大変なことは予想できますね。
以上のことから,2種類以上の文字を含むときは,どの文字に着目するとよいか説明できますか?
例15の次に学ぶ,因数分解最後の例題です。本問のねらいは,「最も次数の低い文字が2種類以上あるときは,その中の1種類について整理するとよい」ことに気づかせることです。
そこで,教科書にある \(x\) について整理した解答を解説したあとに,短い時間でねらいの達成につながる次のような発問をします。
【発問】
例題3について,\(y\) についての2次式とみて降べきの順に整理し,因数分解してみよう。
例題3について,\(y\) についての2次式とみて降べきの順に整理し,因数分解してみよう。
T :みなさんは,\(x\) と \(y\) のどちらの文字に着目して解く解法が好みですか。隣の人と意見交換してみましょう。
S-1 :\(y\) に着目すると,たすきがけが2回必要なので計算がたいへんです。\(x\) に着目したほうが好きです。
S-2 :\(y\) に着目して降べきの順に整理したとき,\(y^2\) の係数は \(1\) となります。また,定数項は積 \((x+2)(2x-3)\) となり,その因数の和が \(y\) の係数 \((3x-1)\) となるから,3行目から4行目は公式を利用して因数分解できます。 \(y\) に着目したほうが,計算が楽なので好きです。
T :結局,教科書の解答とAさんの解答をみてどんなことが言えますか。
S-3 :2つ以上の文字を含む多項式において,それぞれの文字についての次数が同じ場合,どの文字について整理してもよいということが言えます。
S-1 :\(y\) に着目すると,たすきがけが2回必要なので計算がたいへんです。\(x\) に着目したほうが好きです。
S-2 :\(y\) に着目して降べきの順に整理したとき,\(y^2\) の係数は \(1\) となります。また,定数項は積 \((x+2)(2x-3)\) となり,その因数の和が \(y\) の係数 \((3x-1)\) となるから,3行目から4行目は公式を利用して因数分解できます。 \(y\) に着目したほうが,計算が楽なので好きです。
T :結局,教科書の解答とAさんの解答をみてどんなことが言えますか。
S-3 :2つ以上の文字を含む多項式において,それぞれの文字についての次数が同じ場合,どの文字について整理してもよいということが言えます。
この例題3ですが,時間に余裕がある場合は,たくさんの別解を期待して,次のように問いかけると面白いかもしれません。
T :これまで,因数分解の方法として式の見方をいろいろ勉強してきましたが,次の問題は,みなさんならどう解きますか?
\(2x^2+3xy+y^2+x-y-6\) を因数分解せよ。
\(x\) の文字に着目した解答,\(y\) の文字に着目した解答,さらには(あまり期待はしませんが)2次の同次式に着目した解答が混在し,クラスみんなで別解を鑑賞する醍醐味が味わえます。最後に,みんなで教科書を読みながら,式の見方をまとめるとよいでしょう。
5分間のシンキングタイムを設けて別解を考えさせることで,生徒たちは数学を考える楽しさを実感できるでしょう。このような取り組みを通じて,別解を考える習慣をもつ生徒が増えることを期待します。
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