特集記事(高校)

高校

2026.04.23

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~

 3次元の空間座標について考えましょう。

順序対

 2つの実数 \(x, y\) からなる集合を \( \{x, y\} \) と書きます。集合ですから,\( \{x, y \} \text{=} \{ y, x\} \) です。

【問】\((x, y) = \{ \{ x \} , \{ x, y \} \}\) と定義すると,\((x, y)\) と \((y, x)\) は等しいでしょうか。

【答】等しくありません。実際,

\((y, x) = \{ \{ y \} , \{ y, x \} \} = \{ \{ y \} , \{ x, y \} \} \)

なので,\(x = y\) でない限り,\((x, y) \neq (y, x)\) です。

 この順序付けられた \(x, y\) の組 \((x, y)\) を順序対といいます。\(x\) を第一成分,\(y\) を第二成分と呼びましょう。
 二つの順序対 \((x, y)\) と \((x’, y’)\) が等しいとは,第一成分同士,第二成分同士が両方等しいときに成立します。つまり,

\((x, y) = (x’, y’) \iff x = x’\) かつ \(y = y’\)

です。どちらかの成分が等しくないときには,順序対は等しくありません。

\((x, y) \neq (x’, y’) \iff ( x = x’\) かつ \(y = y’ )\) でない

\(\iff x ≠ x’\) または \(y \neq y’\)

 したがって,\((x, y) = (x’, y’)\) の等号は,通常の \(x = x’\) の等号と同じ記号を使っていますが,通常よりも制約の強い等号といえます。

\(xy\) 座標平面

 ある数学的な対象を二つの数の順序対によって,一意的に定めることができるとき,その順序対を座標といいます。
 例えば,向きの付いた直線を \(x\) 軸とし,それと交差する平行でない向きの付いた直線を \(y\) 軸とします。

 二つの直線の交点を原点 \(\text{O}\) とします。まず,原点から \(x\) 軸上を \(x\) 方向に \(1\) 進みます。そこから \(y\) 方向に \(3\) 進んだ点を \(\text{P}\) とします。このとき,点 \(\text{P}\) の座標を順序対 \((1, 3)\) で表すことができます。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~01

 このように,平面上の各点に順序対を一意的に対応させることができます。\(x\) 軸と \(y\) 軸を定めた平面を \(xy\) 座標平面と呼びます。\(x\) 軸と \(y\) 軸は直交していなくてもよいですが,直交したものが多く使われます。この場合の座標は直交座標と呼ばれます。直交していない場合の座標は斜交座標といいます。

【問】順序付けられた三つの実数 \(x, y, z\) の組 \((x, y, z)\) を \((x, y) = \{ \{ x \} , \{ x, y \} \} \) と定義したように定義してください。

【答】例えば,\((x, y, z) = ((x, y), z)\) と定義するとよいでしょう。
\((p, q) = \{ \{ p \} , \{ p, q \} \} \) ですから,\(p = (x, y), q = z\) として,\((x, y, z) = \{ \{ (x, y) \} , \{( x, y), z \} \} \) となります。
さらに,\((x, y) = \{ \{ x\} , \{ x, y \} \} \) を代入すれば,すべてを集合の記号でかけます。

\(xyz\) 座標平面

 ある数学的な対象を三つの数の順序対によって,一意的に定めることができるとき,その順序対も座標といいます。
 例えば,\(xy\) 座標平面上にない向きの付いた空間直線で,\(xy\) 座標平面の原点を通るものを \(z\) 軸とします。
 三つの直線の交点を改めて原点 \(\text{O}\) とします。まず,原点から \(x\) 軸上を \(x\) 方向に \(1\) 進みます。そこから \(y\) 方向に \(3\) 進みます。さらにそこから \(z\) 方向に \(4\) 進んだ点を \(\text{P}\) とします。このとき,点 \(\text{P}\) の座標を順序対 \((1, 3, 4)\) で表すことができます。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~02

 このように,空間内の各点に順序対を一意的に対応させることができるので,\(x\) 軸と\(y\) 軸と \(z\) 軸を定めた空間を \(xyz\) 座標空間と呼びます。\(x\) 軸と \(y\) 軸と \(z\) 軸はそれぞれ直交していなくてもよいですが,多くの場合は,直交したものを使います。この場合の座標も平面の場合と同じく直交座標と呼ばれます。そうでない場合は,斜交座標といいます。

 また,\(x\) 軸,\(y\) 軸,\(z\) 軸の正の方向は,右手の親指,人差し指,中指の順番で定式化する場合が多いので,このように定めた空間座標を右手系と呼びます。

【疑問】上の \(xyz\) 座標空間の図は3次元の図を想定していますが,実際は2次元平面の画面上に描かれています。にもかかわらず,なんで3次元的な立体を想起するのでしょうか。

2次元図形?3次元図形?

 上の疑問に答えるために,以下の各問に答えてください。

【問1】これは何の図形に見えますか?

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~03

【問2】これは何の図形に見えますか?

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~04

【問3】これは何の図形に見えますか?

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~05

 実はティッシュペーパーの箱の枠でした。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~06

【回答】問1の段階でティッシュペーパーの箱という空間図形の一部だと思う人はいないでしょう。大半は四角形と答えるでしょう。問2になると,もしかしたら,空間図形と思う人も出てくるかもしれませんが,二つの四角形でV字を作ったと言う人も多いでしょう。しかし,問3になると,三つの四角形がくっついた図形と見るよりも,直方体の箱を斜めに見た図と考える人が遥かに増えるはずです。

【疑問】例えば以下のように三つの四角形をくっつけると,どのような図形にみえるでしょうか。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~07

【回答】正解はありません。平面の六角形を三等分割した図にも見えますし,立方体の鳥瞰図のようにも見えます。問3の図を平面図形とみる人よりもこの図を平面の六角形と見る人の割合の方が多い気がしますが,いかがでしょう。(是非,教室でアンケートをとってみたいです。)

 この図を平面図形とみるか空間図形とみるかの差は,経験にもとづく先入観なのでしょうか。

空間図形を平面に描いたときの歪み

 ティッシュペーパーの箱の枠に \(xyz\) 軸を加えてみます。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~08

 そして,枠だけ残します。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~09

 なんとなくヘンに見えます。そこで対応する辺々(平行線)を平行に描いてみます。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~10

 今度はなんとなくゆがんでみえます。
 だから,直方体を見る角度を変えてみます。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~11

 これだと違和感なく,数学の教科書に載っていそうな図になりました。

 上で六角形にも立方体にも見える図を紹介しました。立方体とみると少しゆがんで見えた人もいたとおもいます。向かい合う辺が平行になっているにもかかわらず。その理由は実際に立方体を鳥瞰したときの図と異なるからです。

 直方体を描くとき,向かい合う辺が平行になり,かつ鳥瞰図のようにみても違和感がないようにするための角度の範囲がありそうです。その範囲は,遠近を考えてもほぼ平行に見える範囲を特定すれば決まるはずです。チャレンジしてみてください。

【#17】空間座標 ~デカルトの贈り物~12

デカルトの贈り物

 現代では,2次方程式 \(ax^2 + bx + c = 0\) において,\(a, b, c\) は既知の定数(パラメータ),\(x\) は未知の変数と認識する。このような記法の起源はヴィエート(François Viéte,1540-1603。フランスの法律家,数学者。代数学の父)に遡る。ヴィエートは,ラテン語の母音字を未知数,子音字を既知数(パラメータ)として用いるように定め,方程式の一般形を提示し,その解を求めている。

 ヴィエート以前では具体的な数値を係数とした方程式の解法に終始していた。それに比べると,ヴィエートの提示した解法は,解法そのものの新規性よりも,パラメータを導入して一般公式を導いており,その点が革新的であった。

 一方,ヴィエートの扱った2次方程式や3次方程式は,パラメータも含めた両辺の次数が等しくなるように(つまり同次式になるように)設定されていた。例えば,\(x + x^2 + x^3\) に幾何学的な意味付けをすると,長さ \(x\) と \(x\) を一辺とする正方形の面積と \(x\) を一辺とする立方体の体積を足していることになってナンセンスになる。それを防ぐために,例えばこの場合だったら,\(b^2x + cx^2 + x^3\) のように各項の次数が揃うようにパラメータの次数を調節して係数として付与する。ヴィエートは「同次の量のみが比較されるべきである(同次元の原則)」といった。

 この縛りを打破したのがデカルトである(René Descartes,1596[仏]-1650[スウェーデン]。フランスの哲学者,数学者。「我思う,ゆえに我あり」という哲学的命題はあまりにも有名)。すなわち,今日われわれは同次元の原則を無視して,言い換えると,単位を考えずに \(y = ax^2 + bx + c\) などと表現しているが,このような同次式でない表記でも許されると看破したのがデカルトである。すなわち,2乗でも3乗でも平方根でも,すべては数直線上にある数であって,幾何学的な制約は受けないとした。

 デカルトは,等号を \(\propto\)(この左右反転した記号)と表し,\(a\) と \(b\) の積は \(ab\) と書き,\(a\) を \(b\) で割った商は \(\cfrac{a}{b}\) と書くと規定している。また,\(a\) と \(a\) の積は \(aa\),または \(a^2\) と書き,これにさらに \(a\) を掛けるときは \(a^3\) と書き,以下どこまでも進むとしている。そして,\(a^2\) や \(a^3\) は,これを平方や立方などと呼びはするが,普通は単なる線しか考えていない(つまり数直線上にある数)と注意している。

 現代の記号法はデカルトを踏襲している。また,記法だけでなく,アルファベットの後ろの方の \(x, y, z\) を未知量として,始めの方の \(a, b, c\) を既知量のパラメータとして方程式を表す習慣もデカルトにはじまり現代まで続いている。デカルト以降,同次の原則からの脱却がはじまった。
 デカルトが持ち出したこの数直線が座標軸の萌芽であるといわれている。

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【矢崎成俊(やざき・しげとし)先生 プロフィール】
1970年東京生まれ。早稲田大学理工学部数学科卒業。東京大学大学院数理科学研究科数理科学専攻博士課程修了。現在,明治大学理工学部数学科専任教授。博士(数理科学)。専門は応用数理,特に界面現象の数理解析。実験を採り入れた数学の講義で定評がある。
著書: 『実験数学読本』①・②・③ (日本評論社),『次元解析入門』,『界面現象と曲線の微積分』,『動く曲線の数値計算』(以上共立出版),『大学数学の教則』(ちくま学芸文庫),『公式は覚えないといけないの?』(ちくまプリマー新書),他。
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