特集記事(小中学校)

中学校

2024.12.03

【#33】若手先生の困り事相談~令和6年度全国学力・学習状況調査の結果を生かした授業づくり⑤~

「佐藤寿仁先生と考える」では、授業づくりのポイントや教科書の使い方などについて、連載していきます。現場の先生方は、大変お忙しくて教材研究する時間が取りにくいところかと思います。少しお時間をいただき、立ち止まって一緒に考えてみませんか。

 今回は、若手の先生からいただいた困り事について、考えてみたいと思います。

令和6年度全国学力・学習状況調査の結果を生かした授業づくり⑤

【#33】若手先生の困り事相談~令和6年度全国学力・学習状況調査の結果を生かした授業づくり⑤~01

Q 令和6年度全国学力・学習状況調査問題の大問9の問題の設問(1)を用いた授業づくりについてイメージできました。設問(2)を用いた授業づくりのポイントを教えてください。

 大問9の設問(2)を用いた授業づくりも同じように考えることが大切です。「予想―行動―振り返り」という視点で考えることができます。

 前回は、令和6年度全国学力・学習状況調査問題大問9(1)の問題を用いた授業づくりについて取り上げ、特に「〜予想する〜」場面について考えました。
 今回は、この大問9設問(2)を用いた授業づくりを取り上げます。ポイントは、「予想する-行動する-振り返る」ことを通した数学的な問題解決の場面づくりです。まず、「〜予想する〜」から考えてみましょう。

□育成する資質・能力を明らかにするために調査問題を読み解く〜予想すること〜

 大問9設問(2)は、(1)での証明を終えた後、さらに考えてみたいこととして考察を続けている文脈が設定されています。

【#33】若手先生の困り事相談~令和6年度全国学力・学習状況調査の結果を生かした授業づくり⑤~02
【#33】若手先生の困り事相談~令和6年度全国学力・学習状況調査の結果を生かした授業づくり⑤~03

令和6年度全国学力・学習状況調査問題大問9(2)

 設問(2)の正答として、①、②とも「ウ」が当てはまります。選択式であるので無解答率は4.5%と低いですが、正答率は27.4%であり、事象における角の大きさに着目して観察し、問題解決の過程や結果を振り返り、新たな性質を見いだすことに課題がある報告されています。設問(1)と同様に動的に図を観察するわけですが、設問(2)では、図を条件を保ったまま動かしていることを理解して辺や角の大きさについて変わらない性質を見いだすことになりますので、困難を示す生徒が多くなることが想定されます。

 見いだすことが困難な生徒によく見られることとして、設問(1)で証明したことを活かすことがあげられます。生徒は設問と設問の間がどのようにつながっているのか、読み解くことができない傾向にあります。例えば、設問(1)で示した「\(\text{AQ=PB}\)」を受け止めつつ、その証明で用いた\(\triangle \text{QAC}\)と\(\triangle \text{BPC}\)の合同を示したことで、新たにわかる性質について考えようとすることが大切です。一つ一つの数学が不連続なものにならないように、指導の際には留意するとよいです。

 このことを踏まえて、設問(2)における「〜予想する〜」場面を考えてみましょう。

 まず、最初の証明「※設問(1)」について振り返る必要があります。それは、何を証明したのかという「証明した事柄」、どのように証明したのかという「証明の構成」の2つです。これらを踏まえた上で、線分\(\text{AB}\)の中点の位置にとった点\(\text{C}\)を線分\(\text{AB}\)上で動かした図において、新たにわかる性質がないかどうか問うとよいでしょう。証明したことは「\(\text{AQ=PB}\)」ですが、証明に用いた\(\triangle \text{QAC} \equiv \triangle \text{BPC}\)という関係からいえる辺や角の相等関係を生徒が指摘することが考えられます。例えば、\(\angle \text{AQC}=\angle \text{PBC}\)などがあります。さらに、この図において、他にはどのようなことがいえるのかについて発問するなどして、新たな予想を考える場面を設定してみましょう。
 このとき、コンピュータなどを用いて図を動的に観察しながら考えることが大切です。「線分\(\text{AB}\)上を点\(\text{C}\)を動かしてみると…」という状況を常に生徒と共有し、“変わるもの”と“変わらないもの”の視点で図を観察するとよいです。また、線分\(\text{AB}\)上に動く点Cが、線分\(\text{AB}\)の中点\(\text{M}\)上にあるとき、その左右の位置にあるときなど3つの場合で考えれることについて確認し合うことも大切です。
 設問(2)で設定されている考察の対象となる事柄(下)を生徒自ら設定することが難しいことも考えられます。そのときには、教師が一緒に考える姿勢をみせ、「\(\angle \text{AQC}\)と\(\angle \text{BPC}\)についてはどうか」や「\(\angle \text{AQC}\)と\(\angle \text{BPC}\)の大きさの関係はどうなっているだろうか」などと発問し、角への着目を促し、その関係を捉えることを学級で考える予想としてよいかどうかについて、生徒と確認する場面を設定することも考えられます。

【#33】若手先生の困り事相談~令和6年度全国学力・学習状況調査の結果を生かした授業づくり⑤~04

 次回は、設問(2)を用いた授業づくりの「〜予想する〜」を踏まえた「〜行動する〜」について考えます。

※参考資料 

  • 令和6年度全国学力・学習状況調査解説資料中学校数学(国立教育政策研究所)
  • 令和6年度全国学力・学習状況調査報告書中学校数学(国立教育政策研究所)

【佐藤寿仁先生 略歴】
岩手県公立中学校で11年、岩手大学教育学部附属中学校で6年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。学校教育の充実や現職教員の職業能力開発の支援から、全国調査など国の教育のアセスメントに関わり、これからの教育について幅広く研究を進めている。

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