今週の算数・数学フォト

2023.07.17

不思議な塔の、瓦の数

土塔

あみです。大阪府の堺市にやってきました。ますりん、あれはなに? 普通の町に、いきなりピラミッドが建ってる。

なるほど、確かにピラミッドみたいだ。あれは「土塔(どとう)」だよ。元は大野寺というお寺の境内にある、仏塔だったんだ。行基(ぎょうき)という、奈良時代のお坊さんは知っているかな? ここ堺市の出身で、727年にこの土塔を作り始めたという記録も残っているんだよ。

ええっ。もしかして1300年以上も、キレイに残っているの?

いやいや、土や粘土と瓦でできた塔だから、さすがに保たないよ。あれは残っていた遺跡を調べて、2009年に復元されたものなんだ。すぐそこに、\(\dfrac{1}{200}\) の模型もあるよ。

【今週の算数・数学フォト】不思議な塔の、瓦の数02

へえぇ。上から見ると、きれいな正方形だ。1、2……屋根は12層になっているね。瓦で、びっしりおおわれてる。あっ。よく見ると、2種類の瓦が組み合わされているんじゃない?

あみさん、よく気づいたね。正方形の平らな瓦を敷き詰めて、そのスキマに丸い瓦を重ねているんだ。「本瓦葺(ほんかわらぶき)」といって、お寺の建築でよく見られる様式なんだよ。

【今週の算数・数学フォト】不思議な塔の、瓦の数03
*本瓦葺の例

全体を上から見ると、「正方形の瓦が、正方形の形にぴったりと敷き詰められている」と考えてよさそうだね。見た目はややこしそうだけど、実はスッキリしてた。これなら、使っている瓦のだいたいの枚数が計算できるかも!

【今週の算数・数学フォト】不思議な塔の、瓦の数04

いいね、あみさん。発掘調査によれば、底辺の1辺の長さは180尺。ちなみに当時の1尺は約29.5cmだから、1辺は約53.1mだよ。

50m走の長さよりも、少し長いくらいだね。うん。復元された土塔の大きさは、確かにそのくらい。

そして、正方形の瓦の大きさは、一般的に1辺が1尺だったと考えられている。

「cm」じゃなくて「尺」で考えると、シンプルでわかりやすいよ。1辺に、180枚の瓦を並べたんだね。平瓦の数は、\(180\times 180=32400\) 枚だ。あとは、その間に並んだ丸瓦の数の調べ方だね……。

平瓦と丸瓦では、どちらの数が多いかな? 丸瓦を乗せると、こんな図になるよ。

【今週の算数・数学フォト】不思議な塔の、瓦の数05

だいたい、同じくらいに見えるんだけどな……。うーん。あっ、そうだ。外側から1列ずつ、四角いワクみたいに区切って見てみたら、平瓦と丸瓦が交互に並んで、輪になっているみたい。同じ数だよ!
つまり、屋根に使われた瓦の全体の数は、さっきの平瓦を2倍して
\(32400\times 2=64800\) 枚になる。どうかな?

【今週の算数・数学フォト】不思議な塔の、瓦の数06
【今週の算数・数学フォト】不思議な塔の、瓦の数07

すごいよ、あみさん。瓦のおよその数を計算で出せたね!1枚1枚数えていたら大変だったよ。

千年以上むかしの建築なのに、よく見たらとってもわかりやすいし、しかもダイナミック構造だったな。建てた記録がちゃんと残っているのも、すごい。行基さんのことも、もっと知りたくなっちゃった。

*土塔/大阪府堺市。1953年、国の史跡に指定。発掘調査は1998年から行われた。

〒599-8234 大阪府堺市中区土塔町

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