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教材研究の大切さについて
今回は、佐藤先生と佐藤先生から長期にわたり授業改善について指導を受けた金子先生に教材研究についてお話していただきました。
― よろしくお願いします。本日のテーマは、金子先生よりいただきました「教材研究」についてです。このテーマを設定していただいた理由は何かあるのですか。
金子 佐藤先生が学力調査官でいらっしゃったときに、授業改善についてご指導をいただく機会がありまして、初めてお会いしました。教員3年目の私に教材研究や授業での教材の扱い方をご指導いただきました。あの2年間で非常に多くのことを教えていただき、私の教材研究が始まったと感じています。そこで、佐藤先生とお話できるのであれば、教材研究がいいなと考えました。
― 具体的にどのようなお話があったのですか。
金子 数学の本質について考えること、教科書で提示されている問題のその一歩先を考えることの大切さに気づかせていただきました。また、問題をどう提示して、どのように数学的活動を行って深めていくのかを教えていただきました。
これらのことは、教科書に示されていないため、日々自分で考えていないと授業で活かすことができないと感じています。周りの先生方とも話し合う機会が多くなりました。
佐藤 先生方は、教科書を主軸にして指導されていますよね。どの教科書会社であっても、自分が使っている教科書をよく読んでいると思います。しかし、金子先生のように指導力がある先生であっても、若手の先生の授業では、授業を終えた後に「なんとなく子どもは盛り上がっているけど、数学の学習として深まっているのかな?」と疑問に思うことがよくあります。そういう先生方は、教科書に「問題」が載っていると考えているんじゃないでしょうか。そうではなく「教材」が載っていると思うと教科書の見方が変わってくると思います。
― 問題と教材の違いは何ですか。
佐藤 問題は単なる問題です。教材は、マテリアルであり、子どもたちにつけてほしい力やわかって欲しいことを伝えるために使うものです。問題と教材は、教育的な意味を持って扱っているかどうかの違いです。
金子 佐藤先生からご指導をいただいて「問題」についてより意識するようになりました。授業で問題を解説して生徒が解けるようになって、テストでその類題を解くだけでは不十分だと感じるようになりました。これでは、子どもの資質・能力の向上にはつながっていないですよね。
教科書では、日常生活の場面が扱われることが多いです。その数学の問題になる前の日常の場面であるとか、問題提示される前の事象を扱う授業を心がけていくことで、「数学化」や「モデル化」のような資質・能力が身についていくことを実感できるようになりました。こういう授業のほうが私も面白いし、生徒にも発見があったり、感動する子どもも出てきました。佐藤先生が以前のトークセッションでお話されていたポップコーンの行列の待ち時間も扱いました。
佐藤 私がいつもお話しているのは、「扱っているものが子どもにとって学習して意味があるのかどうか」を意識するということです。明日、明後日のテストで点数を取ることも、もちろん子どもの幸せのひとつかもしれません。でも、子どもが「これってこういうことなんだ」「本質的にはこういう話なんだ」というものを、1時間1時間がブツブツときれてしまうものでなく、ある程度のまとまりの時間で理解できるようになってほしいですよね。そういったお話をしました。今の指導要領で言うなら数学的な見方・考え方につながることでしょうか。
― 若手の先生方は、数学の見方・考え方の大切さを見出しにくいと思うのですが、どのように研鑽していけばいいですか。
佐藤 学校の先生は、まず学習指導要領がベースになるのでそれが第一優先になると思います。金子先生がおっしゃったように、資質・能力を育成するってなったときに、その捉えが大切ですよね。長い時間をかけて、多くの問題を解いていけば資質・能力がはぐくめるのかというと、そうではないですよね。
ポップコーンの行列の待ち時間の問題も、単に待ち時間を計算して予想できれば良いというものではないですよね。こういった世の中の事象に潜んでいる関数の見方や考え方を自分たちで可視化して、その数学を使えるようになるということですよね。教科書は意外とそのあたりをちゃんと埋め込んでいます。
― そうですね教科書には、見方・考え方を意識した記述が多くありますね。
佐藤 熟達した先生から見ると、そういうものが教科書に記述されていることは余計な記載と感じてしまうものです。そのような先生は内容の理解だけでなく、指導の方法や教材の見方・考え方までよくご存じです。一方で、若手の先生が増えている現状では、そのような教師の力量は難しいことなのかもしれません。教科書では吹き出しを入れたり、特別なページを設けたりして見方・考え方を演出している部分もあります。そういった箇所であっても、教師が「数学的な見方・考え方」の見方でみなければ、教科書を読むことはできないでしょう。
金子 同じ教材であっても、教科書会社によって提示の仕方、発問、どこを評価するか、どんな資質・能力を育成するかという点が異なっていますよね。若い先生は手元にある教科書の流れに沿って指導することも多いと思います。でも、授業では1人の生徒の素朴な発言から違う方向に行くこともありますよね。私は逆にそれが面白かったりします。
Profile
佐藤 寿仁 Toshihito Sato
岩手県公立中学校で11年、岩手大学教育学部附属中学校で6年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。
金子 裕哉 Yuuya Kaneko
茨城県の公立中学校で8年間教職に従事(現在は2校目)。
3年間、実践研究協力校事業に指定され、学力調査官から算数・数学の授業実践について指導を受ける。そのうち2年間は佐藤寿仁先生から指導を受け、「生徒が感動する授業」「生徒が幸せになる授業」を意識した授業実践を行っている。
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