茨城県立竜ヶ崎第一高等学校・附属中学校
小林 徹也 先生
(前編はこちら)
「あと5分」の発問例:「明確にさせる」場合
次に,「やるべきことを明確にさせる」場合である。数学的帰納法は次のように説明される。
このことから,数学的帰納法には[1],[2]という2つの証明があるともいえる。しかし,それぞれ証明すべき式がどのようなものか,問題文には明示されていない。
例えば,次のような問題がある。
[1]\(n=1\)のときの証明は,①の両辺の\(n\)が\(1\)のときを考えればよいので,難しくないかもしれない。一方,[2]では証明すべき式
\(1+3+5+\)…\(+(2k-1)+\{2(k+1)-1\}=(k+1)^2\)
が書かれておらず,解答者はそれを明確にする必要がある。
そこで,次のような発問が必要となる。
【発問0】 この問題を「数学的帰納法」で証明するとき,[2] で証明すべき式を書いてみよう。
発問後の授業展開・生徒の反応
まず,上のように発問し1分程度個別に活動させる。その後,発問群により生徒の考えを確認したい。
【発問1】 まず,左辺はどうなる?
\(1+3+5+\)… \(+\{2(k+1)-1\}\)と書き,\((2k-1)\)を忘れる生徒もいる。誤りとはいえないが,これがないと,式①との差異が不明確となるので気を付けさせたい。
【発問2】 つぎに,右辺はどうなる?
両辺に\(\{2(k+1)-1\}\)を加えて右辺を\(k^2+\{2(k+1)-1\}\)と書く生徒もいる。これは証明の途中で使うものだが,証明すべき式の右辺ではない。
発問群の活かし方
上の発問は,証明を考えることの一部であり,証明を書く前に生徒自らもつべき「問」といえる。【「あと5分」の発問】ではあるが,生徒に身につけて欲しい「問う力」である。
「あと5分」を活かすための発問群のヒント
最後にまとめとして次の提案をしたい。
- 学びを少し違った角度から見せるために,既習の定理,公式等を別の表現にするような発問をする。
- 問題を解く前に,明確にすべきことについて発問し,その後は生徒自らそのような「問う力」をもてるよう,指導する。
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