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中学校

2022.05.18

令和4年度全国学力調査の問題から考える授業づくり①〜「数と式」編〜

国立大学法人岩手大学
准教授 佐藤寿仁先生

 数学的に考える資質・能力を育成するためにどのような授業が求められているでしょうか。4月19日に実施された全国学力・学習状況調査中学校数学の問題を取り上げ、授業づくりのポイントを紹介します。

 令和4年度実施の中学校数学大問6(2)を取り上げます。

※問題はこちら https://www.nier.go.jp/22chousa/22chousa.htm

POINT①:具体例から成り立つ予想される事柄を、生徒が見いだす場面を設定する

 この問題は、2つの偶数の和について、「同じ2つの偶数の和は、4の倍数になる」ことを説明した後に、ほかにも4の倍数になるものとして、「差が4である2つの偶数の和は、4の倍数になる」ことがいつでも成り立つことを説明するといった統合的・発展的に考えるものです。調査問題では、既に予想した事柄が明記されていますが、実際の授業では、2つの偶数の和について具体的に取り上げるなど帰納的に考え、成り立つと予想される事柄を話し合ったりするなどして生徒が見いだすことが大切です。

【ICT教育のイマ】令和4年度全国調査問題から考える授業づくり①〜「数と式」編〜01

※全国学力・学習状況調査より

POINT②:つまずきを生かし、生徒が数学的に表現をした説明を練り上げ洗練する場面を設定する

 数学的な表現を用いて説明することを難しいとする生徒がいます。そのような生徒に過度に書き方を指導しても改善がみられません。全国学力・学習状況調査では、過去何度も事柄が成り立つことの理由の説明をする問題を出題してきました。正答率は30〜60%ぐらいで推移し、課題があると報告されています。今回の問題では、「差が4である2つの偶数の和は、4の倍数になる」ことがいつでも説明します。文字を用いて説明すればよいという見通しを持つことはできるものの、実際に説明を書くとなるとうまく取り組めない生徒がいます。
 これまでの調査結果を踏まえると、2つの課題が考えられます。

・目的に応じた式変形ができるようにする

 説明の対象である「4の倍数になる」ことについて、どのように表現すればよいかわからない生徒がいます。4の倍数が、「\(4×\)(整数)」であることをこれまでの学習を振り返りながら確認し、計算した文字式「\(4n+4\)」を「\(4×\)(整数)」を満たすように変形すればよいことを、生徒どうしで確認しあうことが大切です。

・説明は“理由の説明”であることを理解する

 教師が「説明しなさい」と発問をした際に、何の説明かがわからない生徒がいます。本問では、「\(n+1\)は整数だから、\(4(n+1)\)は4の倍数になる」という根拠と結論で説明されています。2年生は論理的に考えたことを記述することはまだ慣れていませんので、丁寧な指導が求められます。

【ICT教育のイマ】令和4年度全国調査問題から考える授業づくり①〜「数と式」編〜02

※全国学力・学習状況調査より

 説明を書く指導においては、単に書き方を伝えるのではなく、よりよい表現となるように生徒どうしで話し合いながら、説明を完成させる過程を大切しましょう。

POINT③:教科書を活用して、数学的に説明することができるようにする授業を構想する

【ICT教育のイマ】令和4年度全国調査問題から考える授業づくり①〜「数と式」編〜05

 数に関する性質を見いだし、説明することは全国学力・学習状況調査特有のものではありません。実際には教科書p.22から、数に関する説明の場面があります。教科書では、「成り立つ事柄を予想する」「予想した事柄を数学的に説明する」「条件を変えて、新たな問いを持ち考察する」といった、論理的に考えることや、統合的・発展的に考えることを生徒に促し、問題解決を主体的に取り組むことができるよう構成されています。

 例えば、教科書p.22では「3つの続いた整数の和は3の倍数になる。」という予想について、いつでも成り立つことを説明する際に、生徒が初めて取り組むことに配慮し、3つ続いた整数について文字を使って表す場面が設定されています。さらに、その後に和を求め、「どのように変形すればよいでしょうか」といった目的に応じた変形について促す問いかけが用意されているのです。実際の授業では、これを教師の発問に変え、生徒が見通しを持つことにつなげることが考えられます。

【ICT教育のイマ】令和4年度全国調査問題から考える授業づくり①〜「数と式」編〜03

また、いきなり説明を書くことをせず、数学的な説明に触れさせることも大切です。教科書p.22の最後には、「次のように説明できる」と正しさを宣言し、書かれた説明を読み、予想が成り立っていることを解釈させるなどの場面が設定されています。記述されたものからわかることを生徒が考えることによって、予想した事柄が成り立つことの説明する方法の理解につながるでしょう。

【ICT教育のイマ】令和4年度全国調査問題から考える授業づくり①〜「数と式」編〜04

 数に関する説明は、書き方の指導だけでなく、生徒のつまずきを想定し、どのようにして説明すればよいかを理解することで、生徒が次第に説明を書くことができるようになると考えます。全国学力・学習状況調査の問題からは、そのような過程を大切にすることをメッセージとして受け取ることができます。

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