特集記事(小中学校)

中学校

2022.01.31

【math connect】トークセッション:子供が主役の学びをデザインする Vol.1

トークセッション:子供が主役の学びをデザインする Vol.1 01

「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、教科書をどう読み解き、授業づくりに活用していけばよいのでしょうか。
今回は、第1学年「棒の本数を求めてみよう」を取り上げ、お二人の先生に、教科書を活用した学びのデザインについて、「学びのつながり」「学習者の姿」をキーワードにお話しいただきます。

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子どもの立場に立って学びのつながりを大切にする

―今回は、教科書1 年p.81「棒の本数を求めてみよう」(図1)をテーマに考えていきたいと思います。まず、この問題が難しいというご意見を伺うことがあります。先生方はどうお考えですか。

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図1

小岩 問題が「x 個」の設定ですが、立方体の個数が具体的に決まらないので、子どもはイメージしにくいのだと思います。そこで必要になるのが、p.81 のひろとさんの吹き出し(図1)です。p.62(図2)では、正方形が20 個の設定でしたが、それでは数えにくいから、まず5 個の場合を考えてみようとしました。同じように、イメージしにくい「x 個」を考えやすい具体的な個数におきかえてみようという考え方です。

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図2

 佐藤 p.81とp.62 の問題は立体と平面の違いがありますが、棒をあるまとまりに着目して考えることは同じで、つながっています。子どもはp.61~64 にかけて、文字を使って表すために考えやすい個数で考えることを経験していますし、本時までに文字に関する学びも積み重ねています。そうした経験を活かす場として、あえてx 個で考えさせてみたいところです。子どもの学びを考えるときに、学びのつながりを意識することはすごく大切だと思っています。

小岩 そうですね。文字式は1時間の授業でわかるものではありません。繰り返し文字式に表したり、読み取ったりすることを通して、少しずつわかっていきます。なので、本時までにどのような学びをしてきたかによって、この問題の子どもの取り組みは大きく変わってくると思います。

 佐藤 もちろんx 個から入ったとしても、必要に応じて具体に戻ってよいでしょう。問題がx 個だから、必ずx 個で考えないといけないではなく、子どもの様子を見ながら、文字と具体の数を行き来してもらいたいです。

―子ども自身が解決の見通しを持つということは難しいのでしょうか。

小岩 自分で見通しを持って解決を進められる子どもは限られます。苦手な子でも見通しを持てるように、子どもとのやりとりで全員が同じスタート地点に立てるようにする場合もあります。例えば、ひろとさんの吹き出しをもとに導入のp.62~63 を見せたり、「5個の場合で考えてみよう」と言ったりしてもよいでしょう。

 佐藤 導入のページを見せるという話がありましたが、見通しを立てる場面こそ、似たような問題を解決した「経験」を想起させることが大切だと思います。「似たような問題を考えたことない?」などと発問することで、考えやすい個数で考えたり、1、2、3 個…と変化させて考えたりした「経験」が子どもに想起され、それが見通しを持つことの第一歩になると思います。

小岩 「学びのつながり」で言えば、子どもが解決に行き詰まったとき、すぐにグループで話し合わせる授業を見ることがあります。むしろ、子どもをどの「経験」に戻すか、考える拠り所としてどの学びにつなげてあげるかを考えておくことが重要です。なるべく子どもが自分の学びをもとに自分で乗り越えられるようにしたいです。

 佐藤 授業を、一つ一つ切り出して考えるのではなく、学びのつながりの中で考えるようにしたいですね。そうすれば、この授業も「難しい問題に挑戦する場」ではなく、「見方・考え方を働かせて豊かにする場」という捉えができると思います。

子どもに望む姿をイメージして話し合いをデザインする

―話し合いの場面で「似ているところと違うところを話し合ってみよう」(図3)という発問があります。どういうところがポイントになるでしょうか。

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小岩 小学校ではこういう場面をよく「練り上げ」といいます。「練り上げ」とは「練って何かを上げる」ことですよね。子どもが議論し、深めた先に「何を練り上げるか」を考えておくことが大切です。「どういう数学をつくるのか」「どういう見方・考え方に気づかせるのか」といった視点が話し合いのデザインのポイントだと思います。

―「練り上げ」のきっかけの発問が「似ているところと違うところを話し合ってみよう」ということですね。

小岩 「何を練り上げるか」は授業のねらいで決まり、それによって発問も決まります。ここでは、「似たような問題と同じように考えれば上手くいく」「まとまりに着目すると数えやすい」という考え方に気づかせることをねらいとしたいです。はるかさんとそうたさんの考えの似ている点、導入の正方形の場合で使った考えと似ている点について発問し、これらの考え方を練り上げたいところです。

佐藤 はるかさんやそうたさんの考えでは、みているまとまりは違うけれども、「まとまりに着目する」という考え方は同じですよね。しかも、吹き出しの「正方形のときと同じように…」の意味は、「正方形のときと同じように考える」という考え方ですよね。ねらいに基づいて、子どもに「何を話し合わせ、練り上げるか」を具体的に想定しておくことが大切で、そうすれば、子どもの対話の聞き方も変わってきます。「まとまりに着目した考えを伝えようとしているな」「正方形のときと関連づけているな」というように、漠然と聞くのではなく、観点をもって聞くことができます。

小岩 そのためにも「授業のねらい」を具体的かつ明確にすることが大切ですよね。授業のねらいが話し合いの結論になるはずですから、それが曖昧だと話し合いの観点もぼやけてしまいます。指導書にあるねらいは、先生方が工夫することを前提に汎用的に書かれているので、「子どもに望む姿」を想像して具体的に書き直すようにしたいですね。そのとき、問題が「できる、できない」に意識が向きがちですが、私は、この問題ができなくとも「見方・考え方を働かせること」が大切だと考えています。なので、見方・考え方を働かせている子どもの姿を具体的に想像して、それをねらいに書くようにしています。

―振り返る場面では「学習を振り返ってまとめよう」という発問があります。「振り返り」や「まとめ」では、どういうところがポイントになるでしょうか。

小岩 「何をまとめるか」というときに、知識・技能だけでなく、授業の中で見え隠れしている見方・考え方を表に出して、それらをまとめの対象にしたいと思っています。そのために、「今日の問題の解決で、どういう考え方が大切だったと思う?」などと問いかけ、自由に挙げさせるようにします。どの考え
方を大切と思うかは子どもそれぞれなので、無理に1 つにまとめる必要はありません。その中で特に伝えたいものがあれば、それを取り上げるようにします。

佐藤 「まとめ」については、学習内容を重視するあまり、どうしても知識・技能に偏りがちです。先生が仰るように「今日はいろいろ考えたけど、どんな考え方がよかったかな」と発表させるだけでも、子どもにとってはよい振り返りになります。思考・判断・表現を重視するのであれば、子どもの考え方を共有するのが自然な振り返りだと思います。

佐藤 今日の対談を振り返ると、結局、「子どもに望む姿」を授業のねらいとして明確にもつことが大事ではないかと思います。「子どもがこういう姿を見せてくれたらいいな」「この見方・考え方やよさに気づいた姿はどのような姿かな」といった「子どもに望む姿」を具体的に考え、その実現のために学
びをどうデザインするかを考えたいですね。

対談を振り返って

子どもが主役の学びをデザインするときには、次のことを大切にしたいと思いました。

〇授業のねらいは、子どもに望む具体的な姿で考えを明確にする。

〇学びのデザインでは、知識や技能だけでなく、見方・考え方に関する経験のつながりを大切にする。

〇子どもが話し合う場面では、ねらいとする子どもの姿に迫るように発問等の手立てを工夫する。

〇子どもが振り返る場面では、知識や技能だけでなく、見方や考え方も振り返らせ、学びの対象としてまとめる。

Profile

佐藤 寿仁  Toshihito Sato
岩手県公立中学校で11 年、岩手大学教育学部附属中学校で6 年教職を務め、岩手県岩泉町教育委員会指導主事、国立教育政策研究所学力調査官・教育課程調査官を経て、令和3年度より岩手大学教育学部准教授。

小岩 大  Dai Koiwa
愛知県公立中学校で4年、東京学芸大学附属竹早中学校で10年以上教職を務める(現職)。生徒が数学をつくるプロセスを重視した授業づくりに力を注ぎ、各地で飛び込み授業や講演などを行っている。

この記事は2021年10月に発行したがんばる先生のための算数・数学情報誌math connect Vol.1をもとに作成しています。

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